ホリデーオート
豊田ナンバーやったわ。
フェスティバ
三度目の護摩山with家族
その後はまたカップヌードル!!
映画「この世界の片隅に」を観て
絵描きは凄い
あらゆるアーティストというか表現者の中で絵描きほど「伝える力」を持っている人はないと改めて思った。
古くから名画はそれを見るためにわざわざ出かけさせる。そして人それぞれに感じ、思いを馳せ新たなイマジネーションや創造の種となる。
私が一番最初に衝撃を受けた絵はミケランジェロの「最後の審判」だ。大阪で行われた「花博」で展示された1/1レプリカだったがその大きさと神々しさに圧倒された記憶はあまりにも強かった。その後バチカンで本物を見ることになるのだが自分の中では「二度目」となっていたのであまり感動する事はなかった。その時はシスティーナ礼拝堂の荘厳な雰囲気に心が奪われていた。
もう一つ心に焼き付いている絵は京都で行われた展覧会に出ていた上村松園の「序の舞」だ。女性の内に秘めたる大きな力、不屈の闘志をガツンと叩きつけられた。
この映画はマンガを原作としており、絵を描くことを生業にしているアニメーターが監督としてその原作に惚れ込み大切に大切に作り上げたことで、とてつもないシナジーとケミストリーを生み出した。さらには主人公も絵描きであるため監督はより丁寧に作ることになり多くの人を惹きつける結果になったのだと思う。
この映画は初めて第二次大戦に「色」を付けた映画になった。
もちろん昭和の時代から映画には色が付いているのだが、時間の経過とともに戦争映画は白黒のイメージに変わっていた。
ネタバレに触れるまえにまだ見ていない人に強く言いたいのは、この映画を観る前には可能な限り第二次大戦を題材とした映画をおさらいしてから観て欲しいという事だ。
戦場のメリークリスマス
日本の一番長い日
男たちの大和
火垂るの墓
風立ちぬ
山本五十六
連合艦隊
永遠のゼロ
プライベートライアン
戦場のピアニスト
ライフイズビューティフル
などなど
もっとたくさんあると思うがともかく時間の許す限り観てから行って欲しい。
「色」の意味がよくわかると思うので。
ここからネタバレふくみつついきます。
昼間、戦闘機による空襲を目の当たりにした主人公が「今、絵の具を持っていたら」と思わず呟くシーンがある。この時の対空砲火が空中で次々と炸裂していくのだがそれがあたかも花火のように鮮やかな色を咲かせていき、その描写は主人公の妄想で空に絵の具が色を付けていくようになっているのだ。
この瞬間私の脳内で今まで観た戦争映画に鮮やかな色を付けていったのだった。
白黒のイメージしか残っていない過去の映画に。また記録映像として観た戦争の映像にも。
最初の話に戻るのだが絵描きだからこそ、この表現ができてこのようなイマジネーションを生んだのだ。
かつて、ハリウッド最初のカラー映画「オズの魔法使い」では途中からカラーに変わって観衆を驚かせたのだがその表現とも違う。
CGでもないアニメだからこその表現であり演出となっている。原作を読んでいないので筆で描かれた演出が原作通りなのかどうかは不明だがどちらにせよこの方法を生み出した人に拍手を送りたい。
あるアニメの監督は「この映画がアニメーションの終わりになっても誰も後悔しない」と言ったそうだ。
声優 のん
言わずと知れた「あまちゃん」だ。
この映画における彼女の演技の評価がとても高い。毎日映画コンクールで主演女優賞にノミネートされた。アニメの声優が主演女優賞にノミネートされるのは極めて異例だそうだ。それほど映画関係者の評価も大きかったことが伺える。
もう「北条すず」本人なのである。元々の雰囲気が主人公に近いものがあるとはいえここまでのマッチングは奇跡であり「当て書き」のレベルである。
そして奇跡といえば彼女はそれこそ「あまちゃん」で同じシチュエーションをすでに経験していたのだ。
「あまちゃん」はあの3.11に向かって物語が進んでいく。それに対してこの映画は8.6そして8.15に向かって物語が進んでいくのだ。
現実に起こった「災厄」をどのように迎えてどのように乗り越えていくのかという点で一致している作品に出会う彼女の宿命。そこがまたこの映画の持つ魔力の一つだろう。
予告で主人公が泣いているシーンが映る。これはどんなシチュエーションか観る前にかなり想像した。あっさりと裏切られた。それも斜め上空に。ここでの彼女の演技が、その当時のリアルへと私を引きずり込んだ。いや、叩き込んだ。
この映画は呉という軍港の街やあの広島の市井の人々が戦争の時代に自分たちの生活を守っていた話だ。様々な障害が起こってもそれに負けずに「食べなきゃいけない」という普通の暮らしを。
そしてその何気ない普段の暮らしを淡々と描いていくことで途中にある空襲や爆撃のシーンが余計に激しく感じるようになっている。その激しさは今まで見た中では「プライベートライアン」に匹敵している。
多くの評論家が映画館で見て欲しい理由に挙げているのがそれら戦闘シーンの音響だ。DVDやBDで買ってもその迫力は映画館よりいい環境を持っている人はまずないだろうから。
宮崎駿は「風立ちぬ」を作った時恐らくこの映画に近いメッセージを持っていたように思う。零戦を作った人も普通の人間だったと言いたかったのではないか。この映画の持つ影響力には遠く及ばないが。
そして多くの評論家達が軒並み大絶賛している。多くの人が感動したり号泣したりしている。私は事前のそれら情報が入っていたため逆に「感動」はしなかった。でもこの映画を見て湧き出てきた感情を書いておきたいと猛烈に思った。今までの経験から関連することがどんどんとこの映画をフィルターにして通過していき、何か救われたような気持ちになっていった。
特に、今まで悲惨な戦争映画を見て持っていた「見なければよかった」という感情がだんだん浄化されていくように思えた。
観ていてよかったのだ。
私にとってこの映画は今まで見た戦争映画の総仕上げで鎮魂歌となった。
もしかしたらあの戦争自体への鎮魂歌になったのかもしれない。
オバマが大統領として広島に行った年、天皇陛下が退位の意を表明したこの年に公開となったのは必然だったのだろう。
これから先、戦争映画は作られないかもしれない。そんな気にさえさせてしまう映画だ。
絵描きは凄い。