その日は真夏の太陽が戻って
暑い日だった。午後2時半私たちは
目的地の「ダム」に向かった。
係長はダムが好きで、私はダムのうんちくを
よく聞いた。そんな彼にこっちにあるマイナー
なダムに行こうと提案したのだった。
車で1時間もかからない近場、マイナーなダム
だけあって、到着した時には誰もいなかった。
照りつける太陽は眩しくて、静まり返ったダム
周辺を歩いているとなんだか不思議な気持ち
になった。
高低差のあるダムを上からのぞき込んだり、
写真を撮ったり…ただそこに居て、ダムの構造
を眺めるだけなんだけれど私にはとても楽しい
時間だった。この感覚は分かる人にしか分からない
と思うけど。
ダム周辺をゆっくり散歩して、気が付いたら時間は
夕刻だった。
「そろそろ帰ろうか…」
「うんっ、楽しかったね」
2人でみたこのダムの景色を私は忘れない。
きっと何年も忘れることはできない。
帰りがけ、ダムの通路にカマキリのオスとメスが
交尾をしていて私はそれを触ろうと近寄った。
「邪魔しちゃダメだよ。お楽しみ中でしょ(笑)」
そう言われ私は笑った。