彼女が忙しいので、僕の出番がめっきりと減った。


かろうじて、今、僕になっている…


そんな現状に。


彼女の心を覗かせてもらうと、複雑で、でも前向きな


心が見えてくる。


「係長と遠距離不倫なんて所詮できないよ」


そう寂しそうに笑った彼女。


「好きの気持ちは変わらないけれどね、次第にフェード

アウトもありかな?って思ってるのね」


「そっか…」


「大丈夫だよありのままの現状を受け入れるから」


「強くなったね」


「そぅ??」


彼女が強くなれば僕は必要なくて、


僕が存在する必要もなくなったってことだろう。


僕が消える時、


このブログが終わりを迎えるんだ。





「どう?少しは落ち着いた?」


「落ち着いてないよっ」


係長が帰ってしまって10日過ぎた。


「君がさ…5月に振られた時も、ここの閉鎖の

危機だったし、今回はマジでヤバイかな?

って思ってたんだよ」


僕が言うと彼女は笑った。


「まだまだここは終われないよね。どんな

結末なのかは分からないけど…」


「今どんな感じなの?ブログの読者も

気になってるんじゃない(笑)」


「そぅやね…」


そう言って彼女は言葉を濁した。


「明日ね…仕事でこっちに来るの」


「えっ?」


「会えるんだよ…12日ぶりに」


この2人の間にどんなメールが交されたのか


それを知りうるのは彼女しかいないのだが、


嬉しそうな彼女の表情からは終わっていないこと


をうかがい知ることができた。



彼女が泣いていた。誰も居ない時間、


1人で流れる涙をぬぐいながら。


溢れる嗚咽に僕は声すらかけれらず、


彼女の気持ちを慮った。


「愛したあの人はもう近くに居ないんだよ」


「きっと気持ちは変わってしまう」


「いっその事きっぱりと別れればよかった」


「また会いたい、愛し合いたい」


そんな言葉が聞こえてきた。


僕はここに彼女と係長の最後のストーリーを


書こうと準備をしていたのだけれど…


彼女の心にはぽっかりと大きな穴が開いて、


そこからドクドクと鮮血が流れて溢れていた。


「係長を愛した私がいなくなれば楽なのに」


流れた血を僕はすくいあげた。


ぬるりとした生温かい血液を見ながら僕も


虚無感に襲われた。