照蓮太志塾第8回 | しがく新聞、ここだけの話

照蓮太志塾第8回

今回は初めに選挙についてお話いただき、質疑応答が主でした。終わりに最近の自衛隊に関するニュースとウイグル人のアーレムさんを紹介していただきました。


『選挙について』

今の日本をダメにしているのは選挙制度。候補者ひとりに対して国から支払われるお金は4000万円。その他ポスター7万枚、ビラ25万枚、ハガキ15万枚が支給される。これらを配るには組織がないとこなせない。そのため若手議員は組織には逆らえない構造になっている。しかし今回選挙活動をしてみてお金のかからない選挙がわかってきた。


『質疑応答』

①、共産主義とか資本主義とかありますが、日本は資本主義を上手く使えてないような気がします。資本主義とは何なのでしょうか。


不動産は国が保有するのが共産主義、労働も資源という考え方が社会主義、汗水かかずしてお金ためるのが資本主義。ペマ先生の尊敬するマハトマ・ガンジーは社会主義を唱えていた。ガンジーはコンピューターが普及することに反対していた。例えば駅の切符を切る人が機械に置き換わるという風に、労働という資源がロボットに置き換わり、格差拡大につながるからだ。社会主義は労働力が資源、計画性をもって国が誘導していく。

日本にも池田内閣の所得倍増計画のように社会主義的な政策があった。これをしていなかったら共産主義に飲み込まれていたかもしれない。お米の生産量を調節するため国がお金を払ってお米を作らないようにしたり、国が貧富の差が無いように調節したり、資本主義的社会主義を行っていた。日本は1970年代までは社員の福利を重視していた。終身雇用などは日本独特のもの。ソ連や中国は国の計画が行き過ぎでみんな平等に貧しくなってしまった。

経済が化け物になっている。大きい企業ほど借金が多い。社員のことなど考える余裕がない。社員は社員で、精神科で一週間休めといわれても仕事が気になって休められない。大株主が社長を決めており、社長も使い捨てである。結局、資産を持っている人が決定権を持っている。ある種の限界にきていると思う。何のために商売をするのか。家族のために社会のために商売をするという形から競争に勝てないと食われてしまうという形に変わってきている。ジャングル化している。株式は天皇への忠誠もないし国という考えもない、あるのは利益中心。

民主社会主義とは社会主義的な民主主義、つまり計画的な民主主義。社会民主主義もある、これは民主主義的な社会主義。民主社会主義はヨーロッパに多い。社会主義はトップダウン(上から下へ)、民主主義はボトムアップ(下から上へ)、ヨーロッパでこれができるのは土台にキリスト教があるから。フランスの国旗は左から自由(青)、平等(白)、博愛(赤)からなる。資本主義は自由、共産主義は平等、ともにそれだけだとわがままになるが、はどめの役割をするのが博愛、やさしさ。この博愛がヨーロッパにおいては宗教という土台が担っている。相手のことを考え思いやる。これをヨーロッパでは民主社会主義といい、スイス、オーストリア、デンマーク、本家フランス(首相ド・ゴール、ド・ゴール主義をゴーリストという)。オーストリアやニュージーランドも民主社会主義だったが、移民が多くなり経済的に厳しくなった。ドイツのブラント元首相が民主社会主義の中心的人物。

日本において言うと明治維新を評価する人多い。確かに結果はその時代だが、原因を作ったのは江戸時代の教育水準の高さにある。女性も字を読むことができた。当時の外国人が書いた江戸の見聞を読むと日本の素晴らしさがわかる。明治維新の本質・素材は江戸にあった。狩野派や歌舞伎といった高い文化、高い大衆文化。

ガンジーは「~主義というのは私達に対して枠組みをつくっているけど、その主義の奴隷になってはいけない」と言っている。主義とは便宜上使うものでその主義の奴隷になってはいけない。いろんな主義があるが、それぞれメリットデメリットがある。1960,70,80年代の総選挙の結果には緊張感があった。緊張感があるとバランスが取れる。これをやってくれたら味方に付くよ、駆け引きがある。中国は家や車などの私有財産は認めたが土地は未だに国のもの。日本は成田闘争のように地主ががんばることができる。土地の所有権は地主、これは江戸からそうだった。


、水の戦争についてお聞かせください。(実は第五回で水戦争について話す予定でしたが、ネパール王室のことで詳しくは話せませんでした)。


詳しくは『悪の戦争論』に書いてあります。インドはバングラディッシュの独立を助けた。しかし水は生きるか死ぬかの問題だ、インドとバングラディッシュの間では武力衝突が起きている。19922000年大きな戦争・国際紛争は油ではなく水が原因。これはOilwatchというwebで見ることが出来る。中国三門峡ダムやメコン川、ガンジス川、すべて源流はチベットにある。森林を伐採すると雨が降っても溜まらない、そして水害が発生する。日本は豊かな水を持っているのにミネラルウオーターの消費量は世界一。ペマ先生は1995年水水と言っていた。他の人も言うようになったので最近はあまり言わないけど、水は大事。

下水も大事。民主社会のように下水など公共工事(インフラ)を整備し社会全体がよくなることを少しずつ進めないといけない。ちなみにインドでは未だに英国時代の道路を使っておりボコボコ、中国の公共事業は万里の長城からやっていない、それ以後は戦費に使われている。民営化されたら電気水道ガスが止まる、これは犯罪、憲法25条(生存権)に反する。電気ガス水道といったことは公共事業でやらないといけない。そのために私たちは税金を払っている。民営化して株式化すると社長は黒字にしないといけない。収益重視で赤字業務はカット、これをノルウェーのヨハン・ガルトゥングは「構造的暴力」と呼んだ。平和は戦争がないというだけではない、貧困も暴力だ。日本は戦争で負けたあと、何が国民の幸せに必要か考えた。貧しい国民が身を寄せる場所を提供することが必要だ、これが住宅公団ができた理由。しかし途中から贅沢になったがこれは間違い。今度は国民が自分のお金で家を購入できるよう、低金利の住宅金融公庫をつくった。こういう良い制度を壊してしまった。今は100平米25階建てのマンション、こんなものは必要がない。贅沢したい人は努力してやればいい。国鉄もそう、インドは今でも国鉄は別予算。しかも国鉄には軍隊がある。鉄道は物質と人を送るため、人々のためにあり、儲けるためにあるのではない。戦争になったらまず相手国の鉄道を狙う。そのため鉄道の時刻表などは実は国家秘密である。今日本に欠けているのは公共心。弱い人のことも考えないと国が決して良くはならない。

外務省の報道官の話で、中国が日本の県名全部を商標登録したとあった。インドはヨガの特許でアメリカとケンカしている。アメリカがヨガで200の特許を取った。今のグローバル経済は無秩序の秩序がはびこっている。若い人に言うのは、みなさんが40代の時に中国が日本を抜く、50代のときにインドが日本を抜くということ。このままだと厳しい環境がやってくる、備えないといけない。合気道ではないけど、うまく相手の力を利用して生きていくこと。日本は森はあるけど石油などの資源がない。日本にあるのは人材だった。家元、伝統、弟子、全部潰してしまった軽視している。これから難民がますます日本に来る、そうすると民族問題が出てくる。日本のインド人は月1000人増えている。イスラムも入ってくる。イスラムはイスラム教徒がつくったご飯しか食べない。そして一日に五回お祈りする。新潟でパキスタン人が中古車を買って中東で売っている。かれらの子は日本の学校に行っても宗教上肉が食べられない。学校としても困る。グローバリデーションは良いことだけじゃない。計画と目的(ヴィジョンとミッション)がハッキリしていないとケンカのもとをつくることになってしまう。お互いを認め尊重しあうことが大事だ。例えば結婚、日本は本人の同意のみで結婚できるが、イスラムは相手がイスラム教にならないと結婚できない。ガンジーの言う七つの罪のひとつに「結果を考えない娯楽」というものがある。


20代のうちにしておくと良いことは何ですか。


旅をすること、本を読むこと、ケンカすること(表現しようとがんばること)。楽しくみんなで飲みに行く、年に何回か目的が無くても集まって飲む友達がいるといい。また諸外国にもそういう人を持つといい。お金は持っていても価値が上がったり下がったりする。一方、経験・知識・友情は価値が下がることはない。あとは自分で体験すること、格言を覚えること。ペマ先生のトイレのカレンダーに「外国(とつくに)より渡り来たり夢一つ」と書いてあった。自分のことのように感じた。念ずれば花開くように問題意識を持っているとパッと出会う。何かしようと思ったらその時にその人に出会う。だから若いうちに人に会って議論をすることが大事。ペマ先生が若いときは菅直人さんらとよく議論した。

日本の政治家は党を意識しすぎる。「ペマ先生、党は違うけどよろしくお願いします」、普通で良いじゃん、同じ目的なんだから。党には役割がある。与党が中国共産党を批判したらまずいことになるが、野党ならまだ良い。こうやって小さい党大きい党それぞれ役割があった、目的はいっしょで。主義も同じ、資本主義だけだと傲慢になる、社会主義も必要。


『自衛隊について最近のニュースで一言』

自衛隊が民間人を監視していたことがニュースになっていたがこれはしてはいけないこと。ネパール王国でマウイスト(毛沢東主義者)が暴れたとき、警察から国王に軍隊を出してくださいと要請があった。しかし国王は、「軍隊は国内の人を国外から守るためのもの、国内のことは警察がすべきだ。警察を増やすことはあっても軍隊を出動させることはない。」といって要請を断った。これは非常に大事なこと。自衛隊が国内の政治や情報に介入するのはよくない。自衛隊を持つことは賛成だが、行き過ぎた行為は良くない。三島由紀夫がクーデター起こそうとした。軍人が政治に入ってくるのは健康的じゃない。監視したりすることは内閣調査室の国内部等がすべきこと。


『ウイグル人のアーレムさん』

ウイグルはチベット同様今は中国の自治区です。修士課程二年、三年間弁護士の仕事をして今はペマ先生の下で外交を勉強中。「世界ウイグル会議」は国連で認められている組織でドイツのミュンヘンにある。アメリカにも亡命政府があったが、政府は亡命政府をテロ組織と認定する一方で議会は亡命政府を許可するという政策をとった。ウイグルの女性指導者ラビヤ・カーディルさんはブッシュ大統領に会ったことがある。彼女の子ども二人は今も牢屋の中である。


以上です、最後までお読みいただきありがとうございました。