今回は栗東駅についての話題を書きます。

 

栗東駅の写真(Googleマップのストリートビューより)

 

市長のこんにちはトークで、次のような文章がありました(ボーイスカウト滋賀連盟栗東第8団の皆さんとトーク/栗東市 (ritto.lg.jp) から引用)。

 

栗東市が栗東駅への新快速停車を要望しているらしいです。

そこで今回は、栗東駅への新快速停車が実現するのかを考えてみます。

以下に私の考えを書きます。

 

 

 

栗東駅だけが新快速停車駅に追加される可能性は限りなく皆無

 

結論を先に言いますと、現状のままで新快速停車駅に栗東駅だけを追加するというのは、とても非現実的です。理由は以下の通りです。

1.隣の新快速停車駅である草津駅や守山駅との距離が近すぎるから

2.栗東駅の乗客数が他の新快速停車駅に比べて少ないから

3.栗東駅の乗客数が減少傾向であるから

 

2.について言いますと、栗東駅は野洲駅から大津駅までの間にある駅(新快速通過駅も含む)としては乗客数が最も少ないです。能登川駅は栗東駅より乗客数が少ないですが、隣の新快速停車駅である彦根駅や近江八幡駅から離れていることや、野洲駅を境に列車本数が大きく減るので乗客数に対して普通列車だけの本数では不十分であることから、能登川駅が新快速停車駅になっているのは適切でしょう。

 

3.について、栗東駅の乗客数の推移を載せます。また比較対象として、栗東市内にある草津線の手原駅の乗客数の推移も載せています。このデータは令和4年度栗東市統計書から引用しました。

栗東駅の乗客数は平成30年から減り続けており、令和3年度は新型コロナの影響で規制されていた経済活動が少し復活したにもかかわらず、定期・定期外のいずれも令和2年度よりも少なくなりました。また、定期外の乗客数で見ると、令和3年度は令和元年度の半分以下です。栗東駅の乗客数が手原駅と比べて急激に減っている、ということがわかります。

 

さらに、栗東駅の乗客数は今後も減少傾向が続く可能性が高いです。理由は以下の通りです。

・栗東駅周辺では宅地開発やマンション建設ができる土地が少なくなっており住宅供給が低迷する一方、大学進学や就職に伴って他の地域へと引っ越す人が続出して、栗東駅周辺の人口は減少傾向が予想されるから

・栗東駅周辺に住む人は50代の割合が高く、通勤で栗東駅を使っているサラリーマンが退職して無職になるか近場の会社に転職することで電車通勤をしなくなる、というケースが今後続出すると思われるから

 

(新型コロナで制限されていた経済活動が復活している)令和4・5年度を除いて栗東駅の乗客数が明瞭に増える可能性として考えられるのは、大宝西小学校の近くに進出予定の工場の稼働ぐらいです。もしその工場で数千人という従業員が雇用されるなら、栗東駅の乗客数も増加しそうですが、2019年度の水準まで戻る可能性はほとんどないでしょう。

 

以上から栗東駅は、隣の新快速停車駅が近い上に乗客数が少なく、さらに(新型コロナの影響を考慮しても)乗客数の減少が著しいというのが現状であり、このような駅に無条件で新快速を停車させるというには無理があります。

 

 

栗東駅への新快速停車が実現する可能性は皆無ではない

 

ただし、普通列車の本数を減らす代わりに一部の新快速が停車する、という可能性は考えられるでしょう。「普通列車の減便の救済として快速の停車駅が追加される」という例は各地で見られます。

 

JR西日本の経営が悪化したときや琵琶湖線の乗客数がさらに減ったときに、例えば「大阪方面から野洲駅で折り返す普通列車を京都駅止まりにして、その救済として米原駅まで行かない新快速を京都駅より北で各駅停車にする」というような感じで、栗東駅に一部の新快速の停車が実現する可能性は考えられます。

 

新快速を野洲駅~京都駅の各駅に停車させた場合、停車駅が3駅増えるのでこの区間の所要時間が5分ぐらい長くなります。そうなれば米原駅~京都駅のシェアをJR東海の東海道新幹線に取られることが考えられるので、米原駅まで行く新快速を野洲駅~京都駅の各駅に停車させることは難しいでしょう。

しかし、野洲駅始発・終着の新快速を京都駅より北で各駅停車にすることは困難とまでは言えません。野洲駅~京都駅において琵琶湖線より(便利さや値段の点で)優れた公共交通機関が存在しないことや、各駅停車であっても一般道を走る車より断然速いことから、野洲駅始発・終着の新快速を野洲駅~京都駅で各駅停車にしても利用者に敬遠されないからです。

 

 

以上から、栗東駅に新快速が停車する事例として考えられるのは、「普通列車の運行本数が削減される代わりに、野洲駅始発・終着の新快速が野洲駅~京都駅の各駅に停車する」というぐらいでしょう。

ただし、このようにして栗東駅への新快速の停車が実現したとしても、必ずしも便利になるとは限りません。野洲駅~京都駅の各駅に停車する列車しか停まらないので京都駅や大津駅までの所要時間はほぼ変わりませんし、削減される普通列車の本数が新規で停車する新快速の本数を上回ることで、停車する列車の本数が減る可能性もあります。ただし、大阪駅など遠隔地への所要時間は短縮されます。