約20の特許事務所に断られた後、S特許法人代表のIB氏との出会いが転機になった。
きっかけはChatGPTとのやり取りだった。特許事務所を探す過程でChatGPTに相談し、表示されたリストの中にS特許法人があった。そこに問い合わせた。特別なルートでも紹介があったわけでもない。
問い合わせから数時間後に返信が届いた。
その返信の文面に、それまでのどの事務所とも違う言葉があった。
「論理的なアルゴリズム制御に関連する案件は最も得意とする分野の一つ」という一節だった。
断られ続けた事務所が使っていた言葉は「AI案件」「ソルバー案件」だった。
shiftect.が自動化しようとしているのはそのどちらでもなく、業務の状態に応じて最適化処理への入力構成自体を切り替えるという制御の構造だった。IB氏の返信はその構造を「制御」として受け取っていた。
2026年1月初旬、打ち合わせに先立って発明提案書と画面遷移図を送った。
IB氏はその内容を読んだ上で、「局面ごとの集合切り替えという構成が具体的にどのような処理を指すのか、どのような技術的効果をもたらすかがポイントになる」と返してきた。
shiftect.の技術的核心を正確に捉えた問いだった。
その後の進行はあっという間だった。断られ続けた事務所との説明の繰り返しとは対照的に、出願の方針はすぐに固まった。
なぜそう進んだかというと、それまでの言語化の過程で積み上げた資料があったからだ。
元同僚に断られ、I氏に「言語化してほしい」と言われ、何度も書き直しながら作り続けた資料が、理解してくれる相手に出会った瞬間に一気に機能した。
もしあのとき、元同僚やI氏に「いいね、やってみよう」と言われていたら、shiftect.はここまできていなかったと今は思っている。
言語化を迫られた時間が、出願を支える資産になっていた。
出願のスケジュールはすでに決まっていた。そのスケジュールに合わせる形で、急遽シフテクト株式会社を設立することにした。
shiftect.の技術を世に出すための会社として。だから出願日の2026年2月24日は、設立からわずか4日後になっている。
断られ続けた経験を通じて気づいたのは、技術の新しさは理解の枠組みが合っていれば最初の接触から伝わるということだった。
shiftect.が解こうとしている問題は「与えられた条件で計算する」最適化の問題ではなく、「問題の構造自体をどう組み立てるか」を業務の状態に応じて動的に決定するという制御の問題だった。
IB氏の返信はその区別を最初から持っていた。20の事務所での時間は、そのことを確認するプロセスだったと今は思っている。