I氏への最初の相談で、返ってきた言葉は予想外のものだった。

「スケジューリングはすたれた技術だ」。

この言葉を聞いた瞬間、反論の言葉が出なかった。
スケジューリングの最適化は、数理最適化の研究分野としては長い歴史を持つ。
工場の生産計画、航空機の運行管理、物流の配送計画。こうした領域では、数十年前から最適化技術が活用されてきた。
「すたれた技術だ」というI氏の認識は、その文脈では正確だった。

しかし同時に、この言葉が問いを明確にした。

私が解こうとしている問題は、スケジューリングの最適化計算そのものではない。
個別指導塾の時間割作成と振替対応、施設介護のシフト作成と欠勤・急変への再調整、訪問介護の訪問スケジュール作成とキャンセル・緊急依頼への再調整。こうした現場業務において、「どの要素を今回探索するか」「どの確定済みの配置を固定するか」という問題の構造そのものを、業務の文脈に応じてシステムが自動的に決定するという制御の問題だ。

従来のスケジューリングシステムは「与えられた条件で計算する」ことはできる。
しかし「業務の局面に応じて、何を変数とし何を定数とするかという問題の構造自体を動的に制御する」ことはできない。
この違いが、この構想の核心だ。


I氏の言葉はそれを言語化する問いとして機能した。
「すたれた技術と何が違うのか、言語化してほしい」。
この要求が、その後の言語化作業の起点になった。
そしてその言語化の過程で、この構想の設計思想の輪郭が初めて明確になっていく。