♡Ultra Valentine♡ | 妄想を申そう。(夢小説置場)

妄想を申そう。(夢小説置場)

内輪ネタの夢小説を投下する場所です。

「ドン!!」

深夜、背中に鈍い痛みが走る。

彼の寝相の悪さには大分慣れたが、
やはり痛いものは痛い。

「痛ったいなあ…もう!」

寝ている彼に文句を言うわけにもいかず、
私を蹴ったであろう右脚を
ペチッ!と叩いて再び目を閉じる。


いつも眠る直前まで映画を観ているからだろう。彼は怪物やエイリアンから逃走したり、
空を飛ぶなどのSFチックな夢をよく見るらしい。
だからかベッドから落ちるほど寝相が悪い。
私がここで寝ていなかったら、今も落ちていたかもしれない。


しばらくすると、

「危ない!!逃げろ!」

ムクッと起き上がり、寝言で叫び始めた。
また暴れ出したら困るので、彼を抱きしめて
子供をあやすように背中をトントンしながら

「もう大丈夫だよ。危なくないよ。」

と、繰り返しささやいた。
3分ほど続けると

「…………うん。……わかった。」

チビ太のような声で素直に返事をし、
彼は再び横になりスヤスヤ寝息を立て始めた。
私の胸元が少し濡れていたのは彼の涙だろうか。


ーーーーーーーーーーー

「おはよ。」

翌朝、彼は起きてくるなり、

「なぁ、聞いて。」

と、語り始める。

「俺、いつも見る夢があるんだけどさ…」

「怪物とかから逃げる夢?」

「そう!今回はゴジラみたいなやつだったなぁ。仕事に行こうとしたら、ビルの陰から急に現れてこっちに向かって来んの。」


「で!俺はいつもどおり周りの人に『危ない!!逃げろ!!』って呼びかけながら逃げるんだけどさ、今回はいつもと展開が違ったんだよ!」


「何が?」


「急にふわっとあったかい光に包まれてさ、
なんか、母親のお腹ん中にいる赤ん坊みたいな気持ちになって。」

(あ、私が抱きしめたからかな?)

「んで、その光が『もう大丈夫。怖くないよ。』って言ってくれるの。そしたら俺、なぜか幼稚園児くらいのチビ太になってて、『うん、わかった。』って返事したらその『夢』が終わったんだよ。いつもならベッドから落ちて目が覚めるから、こんな風に終わるの始めてでびっくりだよ。」


彼が興奮ぎみに捲し立てるのを聞いていると
『背中トントン』が夢に良い影響をもたらしたようで、こっちも少し嬉しくなる。

緩んだ口元をコーヒーカップで隠しながら
彼の話に相槌をうつ。


「俺が最近ベッドから落ちないのは横で寝てくれる君のおかげだよな。ありがと。
来週末、俺、オフだからさ、二人でどっか出かけて、夕食はうまいもん食べに行こうぜ。」


時々ある、彼の週末オフの日。
いつもは一人でビリヤードやCDショップに出かけてしまうのに、今回は珍しくデートのお誘い。


「ちょっと待ってね………………。
  ……うん。いいよ。どこ行く?」


予定など最初から入っていないのに、
スマホでスケジュールを確認するフリをしてからオッケーする。


「俺さ、最近いいお店見っけたの。
 土曜日の18時に予約しとくから、夕食はそこにしような。それまではその時の気分で。」


そう言って彼は出かけていった。


スマホにスケジュール入力をしていて
バレンタインデーが間近なことに気付く。

今年はどうしよう……


高級チョコで『ガチ』パターン。
ギャグチョコで『笑わす』パターン。
手紙を添えて『泣かす』パターン。


彼のリアクションまで妄想しつつ、
いろんなパターンをシミュレーションする。

デートに見合う服も買わなきゃなと、
私もショッピングモールへ出かけることにした。

モールに入るなりあちこちに貼られた
「バレンタインデー」のPOPが目に付く。
特設催事場には様々なブランドやメーカーのチョコレートが鮮やかなディスプレイと共に大量に陳列されており、女性客がたくさん集まっていた。

私もその一人になって売場を巡る中で、
思わず目に留まったあるチョコレート。
あまりにタイムリーで、

(彼にあげるのはコレしかない!)

と、迷わず購入してしまった。


チョコは決まったけど、服はどうしよう。
ってか、どこ行くか決まってないのに、
何を着るか決められないや…

夕食のお店も、どんな所だろう…

これは当日の彼のコーディネートを見て
決めるしかないかな。

パンツ、スカート、甘い系、モード系……
彼が着そうなファッションと、
自分が今持っている服との組合わせを考えて
足りなそうな物を買い足す事にした。


夕方帰宅すると、彼の靴があった。
(たぶん仕事部屋にいるんだろうな…)
と思っているところへ、トイレから彼が出てきた。

「あ、お帰り。」

「うん。ただいま。」

「夕飯食べてきた?」

「ううん。今から作るよ。」

「あ、良かった〜。んじゃもうちょい仕事するから、出来たら教えて。」

そう言って彼はまた仕事部屋へ戻っていった。


30分程で食事の用意ができたので、彼を呼びに行く。

「ごはん出来たよ。」

「へ〜い。あ〜腹減った!今夜は何?」

「鶏ササミで棒々鶏と中華風スープ。」

「おっ!良いねぇ〜。野菜も摂れる。」

「ヤスくんはご飯無しでいい?」

「うん。ビール飲むし。やめとく。」


などと話しながらダイニングへ向かう。 

食卓につくと、彼は毎回手を合わせて

「いただきます。」

を言ってくれる。
(もちろん「ごちそうさま」も。)

こういう事を当たり前のようにしてくれるのが彼の素敵なところのひとつ。

「美味いよ。」

ってイイ声で感想を言ってくれるのも嬉しい。



缶ビール2本で少し上機嫌になった彼が

「なぁ、今日は一緒に風呂入ろ?」

皿洗いを始めた私に
後ろから抱きついて誘ってくる。

「えっ//////どうしたの?」

「ダメ?」

「ヤスくん酔ってるでしょ?」

「酔ってなーいよww」

「酔ってるわwwお風呂でアルコール抜いちゃダメだよ〜。」

「ん。だから、一人だと危ないし、一緒に入ろ。」

「そういうことなら……まぁ……いいよ////」

「よし!じゃお湯張ってくる(`・ω・´)ゞ」


彼はいそいそと風呂場へ向かっていった。

皿洗いが終わった頃

「先に入ってる〜♪待ってるよ〜ん♪」

お風呂からのインターホンが鳴る。

「はいは〜い♪」




「ババンババンバンバン♪
       ハァ〜ビ〜バノンノン♪」

酔っぱらった彼の鼻歌に笑いながら、浴室に入る。
椅子に腰掛け、髪、体を洗っていると

「この青アザ、どしたの?」

彼が私の背中を指した。

(ヤスくんに寝相で蹴られて出来た)なんて
言いづらいなぁ…と口淀んでいると、彼はその様子で察したようで、

「あ……もしかして、俺?」

顔を少し曇らせた。

「あぁ…う…ん。でも寝てる時だから…」

「ほんっとにごめん。痛かったろ?」

「もう大丈夫だよ。」

「よく見せて。」


諸々洗い終えた私を湯船へと誘う。

背中の痣をまじまじと見ながら、

「結構デカイ痣になっちゃったな…。あれ?
ここにもうっすら痣の跡ない?」

(そりゃ、蹴られるの昨夜が初めてじゃないからねww)

「俺の寝相やべぇな…ホントにごめん。」

そう言うと彼は私を後ろから抱きしめる。
私も彼に身を預けるようにもたれかかって肩までお湯に浸かる。

普段はシャワーのみで済ませがちな入浴。
久々に湯船でくつろぐ幸せを実感した。


「来週のデートどこ行くの?」

「君の好きなとこ行こうか。」

「早起きして、『夢の国』行く?あ、でも夕食までにこっちに帰ってこれるかなぁ…」

「夢の国へは………今からイくよ。」

低音でささやく彼。
私を抱く腕の力が強くなる。


彼にときめいたせいか、
長湯にのぼせたからか、
頭に血が上ってくらくらし始めた。



夢の国への入国パスポートはkiss。
抱き合ってベッドへなだれ込むと、
彼が私をエスコートしてくれる。
脊髄まで痺れるような甘い声が
快楽の波を連れて来る。

「いっ、一緒に…イこ…」

私も大波に飲み込まれそうで
彼の声にうなずく事しか出来なかった。


その後は彼の寝息や鼓動を背中で感じながら
抱きしめられて朝まで眠った。


ーーーーーーーー

この日以後、彼とゆっくり話す余裕がなく、
どこへ行くか決まらないままデート当日を迎えてしまった。

先に起きていた彼が洗面台で
ヒゲを剃る音が聞こえる。

「あ、おはよ。今日どこ行く?」

鏡越しに私と目を合わせて尋ねてきた。

「本当にどこでもいいの?」

「お店の予約に間に合うならいいよ。」

「遊園地でも?」

「う……。観覧車とか、ジェットコースター
みたいなのに乗らないなら。」


「それじゃ遊園地行く意味ないじゃんww
今日は天気良さそうだし近所をお散歩する?
汗かいても着替えて夕食行けるし。」

「いいね。そうしよ。」


と、いうわけでお散歩デートに決定。


彼の提案で途中から始めた神社巡り。
境内の梅の花に二人とも自然と顔が綻ぶ。

二人ならんで参拝を済ませる。
彼の願い事は沢山あるようで、
私が顔を上げてもまだ拝んでいた。

「おみくじ引く?」

「今年まだだったな。引こうか。」


初穂料をお納めして、おみくじを引く。

「せーので見よ。いい?せーの!!」

「あっ!俺、大吉!」

「あたしは中吉だった。」

書いてある内容を読み、二人とも
『今年も謙虚に、感謝を忘れず生きよう』
と、改めて思った。


帰り道の参道で、彼が

「お昼このへんで食べよ。蕎麦とか茶飯とかうまそうじゃん。」

「うん。」


彼は茶飯・蕎麦セット
私は山菜そばに舌鼓をうちお店を後にする。


3か所の神社を巡り、日も傾いて来たので、
一旦帰宅。

シャワーを浴びて、着替える。

昼間のカジュアルなスタイルとは打って変わって、シックなオトナモードの彼。
ジャケットの似合い方がヤバすぎて、
いつも見とれてしまう。

そして今夜連れて行くお店はそういう雰囲気なんだと即座に理解する。

それに見合うであろうファッションを着て

「こんな感じでどう?」

彼の前に出ていくと、目元と口元を緩めて

「いいじゃん。じゃ、行こうか。」

と、私に背を向けて玄関へ向かった。


タクシーを拾って連れて行ってくれたのは
おしゃれなフレンチレストラン。


『いいお店見っけたの。』っていうトーンで
言うお店じゃないだろうという外観。
あの言い方なら居酒屋だと思ったのに。

「すごいとこだね…。」

思わず口をついて出た。


彼はそんな私の背中に手を添え、
エスコートしながら入店する。


着席し、メニューを渡されて、
スムーズに注文していく彼とは対称的に
私はどれがいいか迷ってしまう。

「コレがおすすめみたいだよ?」

などと時々さり気なく彼に誘導されて
なんとか決める事が出来た。

そこでなんだか魂が抜けてしまい、
ワインリストを持ってきたソムリエと彼が
二人でやり取りしているのをぼーっと見つめていた。


彼がホストテストを終えて、
私のグラスにもワインが注がれる。
ソムリエの説明によると、
マルキ・ド・カロン・セギュール
というワインらしい。


「ファーストはちょっと高いからセカンド
だけど。このエチケットいいだろ?」


という彼の説明はよくわからないが、
ラベルにハートマークが描かれている。

「うん。ありがとう////」

「いつもありがとな。俺が怪我せずにいられるの、君のおかげだよ。乾杯!」

「本当はモツ煮の美味い居酒屋連れて行こうと思ってたんだけどさ。このお店も前から気になってて。あのソムリエさん昔俺がワイン勉強してた時からの顔見知りなんだ。」

「へぇ〜。」

「あと久しぶりにデートみたいなこともしてみたくて。」

「それは私も。今日はとっても楽しかった。
こんな素敵なお店に連れて来てもらえると思ってなかったから、びっくりしたよ。」

「サプライズ成功かな?」

「サプライズなんだwww」

「そーだよ!」


美味しい仏料理とワインで
二人とも機嫌よく出来上がり、
店を後にする。



帰宅して彼に渡した『ゴジラ』の
バレンタインチョコレート。

「私がウルトラの母になって
ヤスくんをゴジラから守ってあげるね。」

と貼り付けたメッセージに彼が大爆笑して
今日が終わっていく。


♡Happy Valentine♡

                         ー 終 ー