ユリカモメのユリカがグリンの肩先から聞きました。

「ねえ、どうするの? 長老はあなたの好きにしていいって言ってくれてるのよ。そろそろ決めなくちゃ」

グリンは砂浜に両足を投げ出して、空を見上げています。三羽の鳥たちはグリンの足元に集まりました。ハウが口火を切りました。

「グリン、急ぐことはないんだ、じっくり心に聞いてみることだぞ」

するとチョウゲンボウのゲンさんは、

「なあに、考えることなんかないさ、さっさと決めちゃえばいい。カンだよ、カン」

ハウとは逆のことを言います。そして小さな声でこう付け加えました。

「だってさ、おれたち、仲間になれたんだぜ。その、なんていうか、おまえは泣き虫で弱虫で、どうしようもない奴だけどよぉ、ここからいなくなったら、おれ、つまんねぇよ」

グリンは小さく息を吐きました。

「みんな、ありがとう。ぼく、決めたよ。今まで勇気がなくて、心の声に耳をふさいでた。みんなことも大好きだったしね」

グリンは砂の上にきちんと座りなおして、みんなを見回しました。

「ぼく、あの沼に帰ることにする。今まで独りが怖かったんだ。でも、ここに来てわかったことがある。ぼくは人のタマシイを注がれたカッパの像だ。タマシイをもったぼくがあの沼にいること、それが生きているぼくの使命だと思う」

みんなは黙ってうなずきました。ひとりゲンさんだけが海の方に体を向けてつぶやきました。

「みんなバラバラになるのか……。しかたねえやな。さあて、おれはまた、ここの空を飛び回るとするかなあ」

みんなに背中を向け、つばさで涙を隠しました。

穏やかな海の向こうに岩山の絶壁が見えます。空は茜色に燃え、ときおり花火のように火の粉が上がります。

「おお~っ! すげぇ」

みんなは声をそろえて叫びました。

 

ハウはまんまる池となかまたちが大好きでした。彼らと生きることに何の後悔もありませんでした。それなのに、いつも心のどこかで「ここではないどこか」を求め続けていたような気がします。子供のころに、まんまる池に捨てられたハウが還っていく先は、ありがた村へ来て最初にいた場所、生まれ故郷の草原なのだと知りました。

ハウはようやく「ここではないどこか」に辿り着いたのです。  <完>

 

それではまた!