石炭火力に脚光
かつて地球温暖化の眼鏡とされた石炭火力が脚光を浴びている。全国の原発が定期検査で次々に運転を停止する中、代替エネルギーとして見直されているのだ。
しかも日本の火力技術は世界トップレベルで、大気汚染物質は大幅削減され、いまや煙突からほとんど煙も出ないという。「脱原発」進め、自然エネルギーを普及させるまでの切り札になるだろうか。最前線を歩いた。
高効率で煙りなし 発電効率世界最高水準!
人口役370万人を擁する国際都市・横浜に、世界最先端の石炭火力発電所がある。
そう聞いて向かったのは、電源開発(Jパワー、本社東京都中央区)の「磯子火力発電所」だ。
JR根岸線磯子駅からバスで9分。根岸湾に突き出した一角に立っていたのは、しゃれたデザインの建物群だった。「発電所のイメージが変わったと、皆さん驚かれる。特に二つのセールス本とを見てほしい」と、同発電所PR館の池守館長。
同発電所は、1967年、国内の石炭産業の保護を目的に営業を開始。横浜市と公害防止協定を結び、環境に配慮した発電所として知られた。
96年からは旧1,2号機の老朽化に伴う立て替え工事を開始。2002年4月から新2号機が発動した。
発電の仕組みはこうだ。ボイラーで石炭を燃やし、その熱で発生した高温、高圧の蒸気により、タービンを高速回転させて、電気を起こす。一日に燃やす量は約5千トン。
両機の出力は原子炉約一機分に相当する系120万キロワットで、横浜市内の電力需要の4割を賄える。
新1号機のボイラー棟に踏み込んだ塗炭、熱い空気に包まれた。棟には格納されたボイラーの高さはなんと100メートル。「限られた敷地を有効活用するため、上方を長くした」という日本初のタワー型ボイラーという。
棟の屋上に上がると、5キロ先の市中心部が一望できた。「大都市にこれほど近い発電所も珍しい」と池杉さん。雲間に富士山も見えた。
発電所の心臓部に当たるタービン棟。タービンが回る轟音で、話し声もかき消される。池杉さんは「一つめのポイントは『発電効率』の高さだ。石炭火力では世界最高水準の43%を誇る」と強調する。
発電効率とは、投入した燃料が本来持っているエネルギーを、どれだけ電気に返還できるかの割合。タービンないの水蒸気の音頭を600度、圧力を25メガパスカルという極限状態まで上昇させることで、一般的な火力(発電効率35%程度)や風力、太陽光(同20%以下)を引き離した。
高さ200メートルの円トルを見上げる。石炭と言えば、「真っ黒な煙」をイメージするが、円トルからは何も出ていないようだ。
池杉さんは、「それが二つめのポイント、クリーン化による環境対策の徹底」という。
新1,2号機の建設時に導入した新装置で、酸性雨など大気汚染の原因となる窒素酸化物、硫黄酸化物、煤煙を、それぞれ87~99%まで除去することに成功。
石炭を燃やしたあとに出る石炭灰は全てセメント材料として再利用する。
池杉さんは「ここは最先端技術を集めたショーウィンドーのような施設」と胸を張った。
代替エネ優等生 世界に分布
埋蔵量は100年OK
CO2抑制進めば切り札に。
Jパワーの石炭火力発電所は、国内に7カ所。海外では米国、中国に計4カ所ある。
同社は「米中、インド3カ国のすべての火力発電所に磯子の技術を適用すれば、排出される二酸化窒素の削減量は、日本の年間排出量より多い13.5億トンに上る。」と試算する。
6月にはインドネシアでの建設計画も発表。「今後も海外に展開していきたい。」と、火力発電技術の輸出に意気込む。
「石炭火力発電って、今時必要なの?」
同社のホームページ中「もっと知ってほしい石炭火力発電」には、こんな書き出しで始まるQ&A方式の説明がある。
答えは「はい、こんなに必要です」。
日本の電気の28%が石炭火力で作られていること、中国では81%、米国では49%の発電に石炭が利用されていることを紹介。
世界中の電気の42%を担っている石炭火力は、まさに”なくてはならない存在”なのです。」
石炭火力というと、時代遅れの発電所のイメージがあるが、実は今も全国で多数が稼働している。最近できたばかりの施設も多く、経済産業省の2010年度版「電源開発の概要」によると、大手電力会社とJパワーで17基が新たに運転を始めた。つまり、石炭火力発電所は、”現役”なのだ。
経団連のシンクタンク「21世紀製作研究所」で研究主幹を務める澤さんは、「経済性、原料調達の安定性の点から見ると、石炭火力のメリットは大きい」と話す。
石炭の埋蔵量は「向こう100年は枯渇しない」といわれるほど豊富とされる。
石油と違い、政情不安定な中東に産地が偏ることもなく、世界中に分布する。
http://blogs.yahoo.co.jp/erath_water/63106708.html
「原子力に次いで電力供給のベース部を担うという点で、重要な電力資源」と澤さん。
最近の石炭火力発電所では、大気汚染物質を環境に悪影響を与えないレベルにまで低減。
最大の課題は、地球温暖化の原因とされるCO2の排出量をいかに抑えるかだ。
この難関をクリアしなければ、代替エネルギーとして認められないだろう。
その対策として注目されるのが、石炭と一緒に「木質バイオマス燃料」を燃やす方法だ。
同燃料は、伐採された原木などを加工した燃料。生育時の光合成によるCO2吸収量で燃焼時のCO2排出量を相殺できるとされる。
本年度中をめどに能代火力発電所(秋田県)で木質バイオマス燃料の導入を計画している東北で円力によると、地元の業者に建築用材などとして利用されない部分を木質チップに加工してもらい、それを石炭と混合し、粉状にして燃料にする。
「森林資源の有効活用に加え、原料の調達からチップへの加工、発電所での消費まで、一連の流れが地元中心に行える」と東北電力。
このほか、排出ガス中のCO2を分離して回収し、地中貯留する「CCS」と呼ばれる技術も研究が進む。前出の澤さんが「CCSも木質バイオマスも、コストが最大のネック」と指摘しながらも。こう話す。
「福島第一原発の事故で、温暖化対策に注力できる状況ではなくなったとはいえ、いずれ国を挙げて取り組まなくてはならない時期が来る。今まで火力は液化天然ガス(LNG)がメーンだったが、CO2問題が解決できれば石炭火力は主役になりうる」