どうやら、共通テストの記述問題は、延期されるようですね。

 
 
‪ ‬
 
 
実は、延期の可能性を考えて、僕が担当する共通テスト対策講座の収録は少し様子を見てました(上のニュースが発表されてから、数学Ⅰ・Aは撮り始めました)。
テキストの記述式部分はカットして収録する予定です(ただし、part1では、センター試験対策講座と同様に証明問題などの記述問題は扱います)。
 
予備校の最前線の現場にいる僕の意見です。
 
記述式問題は数十万人単位の試験には向きません。
 
 
一番大きいのは、新聞等に書かれていますが、採点官の質の問題があります。
 
記述式の採点では、
 
 
① 答は合っているが、答えに至る道筋が間違っている答案を見抜く力
 
②答えは間違っているが、方向性は正しいもの(途中の計算が間違っているだけで、その考え方で正解を導けるもの)であることを見抜く力
 
が採点官には要求されます。(①は0点に近い点数で、②は相応の部分点が与えられます。)
 
 
これを見抜く能力がなく、採点基準にあるかないかで、採点官が採点を行うようでは話になりません。
 
全てとはいいませんが、一部の学生バイトではまず無理だと思います。
 
また、我々が予想もしない解答がある場合(実際に、予備校では模擬試験実施後に採点基準会議を行うのですが
想定外の解答はよくあります)、その解答の採点基準を作成し、採点官全員が直ちに共有する必要があります。
 
したがって、記述式の採点では、一つの問題に対する採点はできるだけ一人で見る(かつ他の人が複数回チェックをかける)のが理想で(一人で見るのであれば、新しい採点基準を共有する必要はない)、一人が不可能の場合は、2、3人で採点するのが、記述式で正確な採点を行うための限界と考えます(プラス複数回チェック)。
通テストはものすごく多くの人間が採点し、採点基準も事前に作っておくんじゃなかったでしょうか。
数学力が低い集団では、イレギュラーな事態に上記対応ができるとは思えません。
 
大学の教官という数学力において優秀な人間がいて、採点枚数も少ないので(大学だと学部単位で採点を分けることもできる)、ほぼ正確な採点ができるわけです。
 
共通テストの記述式問題の採点に公平性が担保されるとは思えません。
 
 
‪ また、答だけを書く場合でも、同値なものは全て正解なので、採点基準にあるなしではなく、採点官各自が自分で正解か判断できる力も必要です。←例えばabsinθが答えの問題でabcos(90°-θ)でも正解とかね
 
 
 
 
ちなみに、大きい予備校は何万人単位の予備試験を実施してます。その採点官の多数いますし、大学院生もいます。
 
じゃあ、これはきちんと採点ができているか?
 
 
というと、大きな声では言えませんが(恐らく)、
 
ある程度(0.1%くらいの採点ミス←実際の割合は知りません)は、やむを得ない
 
 
と考えていると思います(もちろん、極力ミスは減らしたいと考えていますよ)。
 
※実際の入試において、0.1%の採点ミスは許されません。
 
 
 
というのは、予備校の模擬試験の目的は、全ての人の答案を正確に採点して、一人の間違いもなく正確な合否判定をすることではありません(それは採点者の数、採点者の学力を考えると上記と同じ理由で無理)。
 
模擬試験している某社もわかっているはずなんですけどね。
 
予備校が行う模擬試験の目的は、記述試験の正確な得点分布を作ることでです(ごくわずかな採点ミスがあっても、全体の得点分布として信用できるものができる)。
 
これにより、各自の記述力の相対的位置がほぼわかるので、志望する大学に受かる可能性がどの程度あるのかがほぼわかります。
 
また、色々な模擬試験を受けることにより、さらに正確な相対的位置が把握できるので(1回の模試の結果ではなく、複数回の模試の結果が大事ということ)、すべての生徒に対して、この目的は果たせていると思われます。
 
 
予備校では、採点ミスは極力減らしたいのでいろいろな工夫をしています。
 
 
例えば、
 
・採点官が正しく採点しているかを講師がランダムでチェックして(実際に採点官に採点させた答案のコピーをとり、講師が採点し、同じ点数になるか調べる)、採点者として不適格な人を外す
 
・採点官が採点できない答案は講師に回してもらい、講師が採点するようにする
 
・答案返却を実施して、採点が間違っていると思われる答案は、問い合わせ(送り返し)をしてもらって採点のやり直しを行う
 
などなど。
 
 
これでも、完全に防げるわけではありません。
 
某社それやるんだっけ?
 
また、模擬試験ですから、採点が間違っているってわかっても、採点のやり直しを求めない生徒もいます(採点ミスなければこのくらいの点数だから、得点分布などから、自分の相対的位置は分かる)。
 
このようにして、予備校の模擬試験の目的は果たせてるわけです。
 
 
でも、大学入試ではそのようなことは許されません。
 
ですから、記述式は少人数の試験(国公立の2次試験)‪ にしか向かないのです。
 
 
 
そもそもの話ですが、記述力は二次試験で問えばいいだけの話です。
一次試験で記述式にする意味は全くありません(記述力を見たいなら、全ての大学の個別試験に記述式を課せよと個人的には思います)。
 
ということで、僕個人として、一次試験での記述式は延期ではなく、中止にすべきであると考えます。
 
思うままに書いたら、めずらしくえらい長文(笑)。失礼いたしました。