たまには、少しだけ本格的な数学の話を。



複素数a+bi (a,bは整数、iは虚数単位)をガウス整数といいます。

そして、ガウス整数a+biの集合をガウス整数環といいます(通常、Z[i]とかく)。つまり、


Z[i]={a+bi|a,bは整数}


ガウス整数は大学入試にも出てきます。例えば、下は2000年の一橋大。









このガウス整数環は、整数や多項式と同じように、割り算ができる「ユークリッド環」という非常にいい性質をもっています。

そうすると、素因数分解(正確には素元分解という)を一意的にすることができます(ユークリッド環は一意分解整域でもある)。


素元分解においてこれ以上分解できない数を素元(素数のイメージ)といいます。←正確な定義ではありませんがなんとなくわかかるでしょ



このとき、どういう数が素元となっているか調べてみましょう。


例えば、


2=(1+i)(1-i)、5=(2+i)(2-i)


という素元分解ができるので、ガウス整数環では、2も5も素元ではありません(整数の集合においては、2も5も素数)。



ちなみに、3はガウス整数環では素元です。






整数nが素数でないならば、nはガウス整数環でも素元でない


のは明らかなので、上の例でみたように、


整数nが素数のとき、nがガウス整数環でも素元になるのはいつか?



というのは、興味深い話題です。



これに関しては次の定理があります、


素数pがガウス整数環で素元であるための必要十分条件はp=4m+3(mは整数)の形である。



(上の例からも2,5は素元じゃないでしょ)


証明は、-1が平方剰余かどうか(a^2≡―1(mod p)となるaがあるかどうか)を判定すればできるのですが、ここでは省略します(面白いから興味ある人は数論の本を読んでみて下さい)。


これにより、pが2か4m+1型の素数のとき、素元分解


p=(a+bi)(c+di)


をすることができます(a+bi,c+diは、±1、±i以外の数(☆)←この4つを単元といいます


このとき、両辺のノルム(絶対値)考えると、


p^2=(a^2+b^2)(c^2+d^2)


で、(☆)より、a^2+b^2>1かつc^2+d^2>1がわかるので、


p=a^2+b^2かつp=c^2+d^2が成り立ちます。


これで有名な定理


pが3以上の4m+1型素数のとき、p=a^2+b^2 となる整数a,bが存在する



が証明できたことになります。実際、




5=1^2+2^2、

13=2^2+3^2、

17=1^2+4^2、

29=2^2+5^2、

37=1^2+6^2

41=4^2+5^2



という感じで、4n+1型素数は、二つの整数の平方和で表されます。


話はそれますが、先ほどの一橋大の問題も、上の証明と同じように、ノルムとればあっという間におしまいです。





ちなみに逆も成り立ちます。



pを3以上の素数とする。p=a^2+b^2 となる整数a,bが存在するならば、p=4m+1型である。




(証明)p=a^2+b^2 のとき、pが奇数なので、a,bは一方が奇数、他方が偶数。よって、




p=a^2+b^2≡0+1≡1 (mod4)





さらに、任意の正の整数nは4つの整数の平方和、つまり


n=x^2+y^2+z^2+w^2


の形で表されることも知られています。



んー、面白い!


今日は、このくらいで。