今日は「父親コンプレックス。」

お子さんは父親の背中を見て育ちます。小学校高学年では、父親にあこがれたり、父親に追いつけ、追い越せの気持ちが強くなります。とても優秀なお子さんなら、知識欲も競争心もありますので、大変な勉強もなんとか乗り越えられるのですが、多くのお子さんは、この壁に突き当たります。ましてや、お父さんが成功者なら、あこがれているものの、その背中は遠い存在なのです。

父親は言います。「父さんは、小学生のころ、受験のため、問題集をいっぱいやった。だから、ss70の中学に受かったんだ。お前も必死になってもっと勉強しろ。最難関に合格したら行かせてやる!」その後、お父さんは、少しだけ勉強を見ます。なかなか解けないのに痺れを切らし、「なんで解らないんだ!勉強不足だ!そんなんじゃ受からないぞ!」しまいには「中学受験なんか止めてしまえ!」(実際にあった例です。)

父親は言います。「軟弱な息子を千尋の谷へ突き落す。そこから這い上がってこその人生だ!」

裕福な家に生れ、蝶よ花よのわが子にいきなり千尋の谷は・・・。父は言います。「他のことで不自由はさせていない。勉強ぐらい、頑張らないでどうする。」

さあ!いきなりの北風!それで本当に勉強が出来るようになるのでしょうか?

あこがれのお父さんであればこそ、しっかり我慢して教えてやってください。出来たらいっぱい褒めてやってください。うまく理解させられなかったら、うまく教えられないことを謝ってください。

親が教えることに切れたケースは、生徒の態度で解ります。「僕、頭が悪いから。」「私、バカだから」と必ず言います。塾でのお子さんとの戦いがここから始まります。

Aの場合やる前に「無理!」と言います。「僕、頭が悪いから。」・・・うちで親がかなり切れて叱られたようです。このネガティブさと向き合う作業、大変でした。長い時間をかけて、一歩、一歩。親御さんには何度も言いました。理解が得られたのは受験近くになってからでした。苦しい時に先生を頼らずにまで到達できないまま、受験。ss60超の子が実力発揮出来ず、まさかの第一志望不合格。それでも、行きたかった中学に合格。やっと解ってくれた親御さんがいるんで、ネガティブから抜け出したAの未来は明るいです。

Bの場合いつまでたっても、やる気を出しません。勉強してくることができなかった言い訳ばかり。よく思いつくもんです。反抗期と言える程母とは言い争い。何度やっても覚えられない社会に「絶対無理!」塾でもあの手この手でやってみましたが、思ったように上がって来ません。ところが、突然その日はやってきました。やさしいお父さんで、コンプレックスなんて、と思っていたのです。お父さんは遠い存在。勉強を教えてくれたことも、勉強について話し合ったこともありません。恐らく、お父さんも、強制しないことがいいんだと思っていたはずです。

受験が近くなり、模試を受けました。成績はともかく、お父さんと一緒に解答をしました。その後、塾に来て興奮気味に「この問題、絶対×××だと思った。でも違ってた。お父さんも×××って言ってた。絶対あってるって思ってた。」といいました。実はBがこだわったのは不正解だったことではないのです。お父さんと対等に議論したことだったのです。

恐らく、生まれて初めて、勉強で、対等に、お父さんと向き合ったのです。それは小さな問題でしたが、Bにとって偉大な一問でした。数日後、お父さん、C大の医学部受かったら、△△を買ってくれるって。絶対買ってもらわなくちゃ!」ボジティブに大変身。ぐんぐん成績も伸び、第一志望に楽々合格。これからが本当に楽しみです。

父親の役割、本当に大きいです。仕事に忙しいと思いますが、一緒に勉強したり、教える時間を作ってください。理解してやってください。当たり前ですが、お子さんは母親のみで育つわけではありません。