口外厳禁のハマグリ事件 | 鹿吉の徒然なるままに by Shicayoshi Cake Lab.

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ひとつひとつを丁寧に、食べてくださる方を想って焼き上げる、を信念に掲げた焼き菓子屋の徒然なる日々を綴っております。

今日もバタバタしているうちに一日が終わり、明日が大晦日なのか…とちょっと怖くなった鹿吉です。

こんばんは!

 

大晦日と元旦はひたすらグータラゴロゴロしなくてはならない、と教えられてきた私ですから、やるなら今日のうち!!!と焦りを隠せません(笑)

 

年の瀬というのは本当に忙(せわ)しないものでございます…

 

さて本日は父から絶対に口にしてはならないと厳命されている「ハマグリ事件」をお正月の目出度いハマグリにかけてブログにしたいと思っております。

 

この話題を振ろうとする度に父が目を真ん丸に見開いて口外するな!と「シーーーーーーーーッ!!!!!」と口元に一本指をあてるくらいには口外厳禁の話にございますが…

 

話すな、とは言われておりますが、書くな、とは言われておりませんので

 

書きたいと思います!!!

 

ときは随分と遡りまして、私の記憶だと中学に上がるか上がらないか、の時期だったかと存じまして、何組かの家族と合同で行った旅先での事件にございます。

 

ちなみにこの事件が口外厳禁なのは話題にする度に母が激怒するからにございます(笑)

 

もう過ぎ去ったこととして飄々と日々を過ごしている父に、怒り再燃で母が怒りだすのが父としては堪らないらしく、私が話しをしようとする度に必死の形相で止めるのでございます。

 

やんちゃな子供を連れて行くには高級なお宿での滞在。その時点で親の気合がわかるというものにございます。

お部屋も立派、お食事も立派、ここぞとばかりに頑張った旅行だったのだろうと、今になって思います。

 

食事は和食にございました。

世に言う会席料理にございます。

 

先付八寸からスタートするお料理の数々はおそらく美味しかったのだろうと思うのですが、子供の舌からすれば「これ、嫌い~」というものばかりにございました。

 

私は会席料理が苦手でございました。

どれほど手が凝っていて素晴らしいお料理でも美味しいと思えなかったのでございます。

 

大学卒業後、家族で行った先の料亭で「また会席料理かぁ…」と辟易していた私だったのですが、何年ぶりに食べた、その会席料理があまりにも美味しくて、美味に感じて

 

「私、大人の舌になったんじゃ~ん!」

 

と感動して以来、会席料理も懐石料理も大好きになりました♡

 

でも当時は何が美味しいのか、あまりにも子供舌過ぎてわからなかったのでございます。

 

あまり箸を付けないまま食事は進んでいきます。

我が家の父はブラックホールと綽名を付けるくらいには、もしくは瞬時に食べ物が消えていく様からイリュージョンと呼ぶくらいにはよく収納する胃をお持ちでございまして、私の残したものも母の残したものも「勿体ない」の一言で食べ尽くしておりました。

 

母と私が食べられるものといったら椀物、お造り、天麩羅(揚げ物)、蒸し物、そして最後のご飯と香の物、止め椀くらいにございました。

 

事件の中心でもあり証拠物件にもなるのはハマグリの入った椀物にございました。

 

澄まし汁にはほどよい塩味があり、ハマグリそのものの旨味を引き出すような椀物にございました。昔から吸い物系は大好きでございますから、これだけは夢中になって食べておりました。

 

そのときに事件は起きたのでございます。

 

ハマグリの澄まし汁を口に含もうと椀物の蓋を開けた母がキュッと眉を顰めました。

そして周囲を気遣うように父の方に身体を寄せてから小声で訴えたのございます。

 

なんだか、このハマグリ、臭う気がする、と。

 

母はデリケートな人でもございますから、食べるものには細心の注意を払います。

だからこそ、椀物の蓋を開けた瞬間にふわりと漂った、生臭いような、なんともいえない臭いに危険信号を感じ取ったのでございましょう。

 

ところが自分の椀物に夢中になっている父は母にちらりとも視線を寄越すこともなく、そして母の椀を確認することもなく、にべもなく言い放ちました。

 

「なんだ、貝ってそういうもんだ!」

 

父の言葉を受け、母はそうか、ともう一度椀に口を付けましたが、どうしても臭いが気になります。けれども再度父に訴えても

 

「貝なんてそういうもんだ!大丈夫だから食え!!!大袈裟だな!!!!!」

 

と言われるばかり。

 

ふたつ入っていたハマグリのひとつを口にすれば、やはり口腔内から鼻腔へと抜けるように生臭さが走ります。本当にこれは大丈夫なのか、不安に駆られた母はもう一度、父へと椀を押し付けながら訴えました。

 

すると自分の椀をすでに食べ終わっていたらしい父がなぜか苛立ちを隠そうともせずに、母を一瞥すると差し出された椀を手に取り、鼻先へと近付けました。

 

ぷくりと鼻の穴が広がったかと思った刹那、ものすごい勢いで母に椀を返すと父は叫びました。

 

「腐ってる!!!!!これは腐ってるぞ!!!!!!」

 

そして眉を顰めてから母を見て

 

「よくこんなの喰ったな???!!!」

 

と宣ったのでございます!!!!!

 

あんたが「食え」って言ったやないかいッ!!!!!!!!

 

母が口にしていたハマグリをポンと慌てて吐き出したのは言うまでもございません。

 

あれほど何度も訴えたのにちっとも確認もせずに「大丈夫だ」と言った父には頼らずに、最近は私の鼻が母の「食べられるかセンサー」になっております(笑)

 

そりゃ、思い出す度に腹が立っても仕方ないよな、とぷくく…!と笑ってしまう私は今日も元気に焼いております。

丁寧にひとつひとつ漉して、練って、炊き上げて焼き上げたスイートポテトにございます。

 

滑らかな舌触り、濃厚な芋の味わい、ほんのりと薫るバニラ、そして舌先に残る上品な甘味とバターが美味しい焼菓子にございます。

 

こちらの商品は是非とも一度は召し上がっていただきたいものとなります!

是非是非一度ご賞味くださいませ~

 

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ちなみに母が上手にハマグリだけを吐き出せたので、おかげさまで体調を崩すことはありませんでした。けれども虚弱体質を自認している母でございますから、旅先で倒れるわけにはいかない、とひたすら安静を心掛けて寝込んでおりました。

 

ギリギリまで休めば、少なくとも帰路で病院に向かう羽目にはならないと考えていたのだと思います。

 

すっぽりと布団を被り、目だけを出した母の姿を見ては父が「大袈裟だ」と苛立っておりましたが、今思えばそれは酷な話だな、と思います。

 

母は責任感から寝ていたのですから。

帰ればすぐに日常が始まります。仕事も始まれば、家庭のことも子供のことも当然の如く付いて回ります。安静にできるときに安静にして、事後に備えていたのだろうと思います。

 

ホテルの方が母の椀物のハマグリが傷んでいたことを謝罪しに部屋まで訪れました。

そして平身低頭で謝りながら地元の名産品を置いて行ってくれたのでございます。

 

「奥様は大丈夫でございますか?」

 

不安げに瞳を揺らしながら伺ってくるホテルマンに父はあっさりと言い放ちました。

 

「寝てますけどね、大袈裟なだけなんですよ」

 

そんなんだから、母の怒りが再燃するんだ~ッ!!!!!!!

 

禁断のネタを書いちゃったから、母の怒り再燃前に暫く逃亡しておいてね~♪と父に思う私は、この年の瀬に逃げろと言う娘もなかなか酷だな、と思わなくもありません(笑)

 

本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

またいらしてください~♪

お待ちしております!!!