からりと乾いた冬の空気を胸いっぱいに深呼吸した鹿吉です。
こんばんは!
ちゃんと呼吸をしているはずなのに深呼吸をすると身体中の血管内の酸素が総入れ替えした気分になってかなりリフレッシュします。
とくに吸い込むだけで肺がキュッと縮むくらいに冷たい空気は気持ちがいいです。
これも一種の「サウナハイ」になるのでしょうか?
整ったような気がするのは確かですけど(笑)
さて本日は鹿危険注意の話をひとつ。
鹿といえば奈良と厳島が有名でございます。
私はまだ縁がなく、厳島神社に参拝したことはございませんが、奈良にはよく行きます。
私の心の故郷といっても過言ではないくらいに大切な場所でもあります。
用事があってもなくても奈良には行きたいと常から思っておりますが、なかなかすぐには行けるわけでもなく、去年末に母とようやっとふらりと訪れることができました。
目的は奈良国立博物館でした。
毎年開催される「正倉院展」です。
チケットが予約制になっておりましたので、慌ててチケットを購入し、その日を迎えました。
さすがに予約制だけあって押し合いへし合いの状況ではありませんでしたが、かなりの人出ではありました。
書を嗜む端くれのひとりとしては今回は見逃せない光明皇后さんの写経などがありましたので、是が非でも、と母とふたりで観に行ったのでございます。
展示は素晴らしいものばかりでございました。
とくに囲碁版の細工や刀飾りなど、これを人の手で作り上げたのか、と思うと当時の職人の技術力には舌を巻きました。
故宮博物院に行ったときも思いましたが、人の手というのはどれほどの芸術作品を作り出せるのだろうと感動したものです。
1200年前の素晴らしい作品を堪能したあと、母とふたり奈良公園内を散歩することにしました。あまりいいお天気とはいえず、どんよりとした雲が空一面を覆っておりましたが、降りだすこともなかったので、鹿を愛でようということになったのでございます。
厳島の鹿さんがどのようなタイプなのか、私は知りませんが、奈良の鹿はいる場所によって個性が違います。少なくとも奈良公園内及び東大寺境内にいる鹿さんたちはかなり観光客慣れしているものが多く感じます。
春日大社さんの奥まで行くと、少しだけ人慣れしていない鹿になるので、近寄ってきてもすぐに逃げたりして、野性を残している感じがあります。
私たちが行ったとき、その年の春生まれの子と秋生まれの子が群れの中でのんびりとした様子で短い草を食んでおりました。
秋生まれの子は時折母鹿のおっぱいをおねだりしておりました。
なんとも長閑でほっこりとする光景です。
そのなかでも警戒心も少なくぺたりと芝生の上に座って草を食んでいた小鹿がおりました。
それはもうくりくりのおめめで可愛らしさ満載の子でした。
あまりにも可愛かったので写真を撮ったのですが、身動きひとつしないどころか、ポーズまで取ってくれるサービス精神に母は調子に乗って小鹿を撫でながら一緒に写真を撮ったりもしました。それでも逃げないのでございます。
それどころか、母鹿が威嚇してくることもありませんでした。
これは非常に珍しいことでした。
秋生まれの子はおそらく生後2か月に満たないくらいのはずなので、大抵はすぐに逃げますし、もとより母鹿が傍に人を近寄らせることがありません。
それを撫でて一緒に写真を撮るなんて、奇跡だと思いました(笑)
まだ毛質がほわほわと柔らかい感じがわかるでしょうか?
本当に可愛らしい子でした。
さてしっかりと愛でさせてもらった母は実に機嫌がよく、そのお礼にとこの子に鹿せんべいを買ってあげることにしました。
すぐ近くに鹿せんべいを売っている売店がありまして、母はいそいそと売店へと足を向けました。その姿を目で追いながら、ふと私は殺気を覚えたのでございます。
なんだろう、と周囲を見渡せば、そこにいるほぼ30頭ほどの鹿さんたちの視線が売店に向かう母を幾分かの殺気の籠った瞳で熱く見つめていたのです。
買うのがバレてるよ…と思った私は購入した鹿せんべいをそっとマイバッグに隠した母に注意を促したのですが、時すでに遅し、でございまして、母が売店から離れた瞬間、周囲にいた鹿さんたちに襲われました。
小さく悲鳴を上げながら鹿せんべいを死守する母に駆け寄り、鹿せんべいを半分奪いました。
そして私は母を襲う鹿さんたちの注意を自分に向けながら母に目的の子に鹿せんべいをあげる時間を作ったのです。
作戦はある程度は成功しまして、母は無事に目的の子に鹿せんべいを与えることができました。
けれど鹿せんべい7枚くらいでたくさんの鹿さんを私だけに引き付けることは不可能で、私の手元から鹿せんべいが消えた直後からあれほど熱い視線を私に送っていた鹿さんたちはあっさりと離れて、まだ鹿せんべいを手にしていた母に殺到していったのでございます。
ヒャーヒャー悲鳴を上げながら、それでも「この子にあげたいの!あなたにはさっきあげたでしょ!」と鹿さんを嗜(たしな)めながら母は必死に鹿せんべいを死守しておりました。
鹿さんに囲まれた母を助けたくても、こうなると手出しもできません。
なにより鹿さんの身体で阻まれて傍に寄ることもできないのですから。
どうしたものか、と眺めていた私の前で、なかなか鹿せんべいを貰えないことに焦れた鹿さんがひとつ、母の腰辺りに強烈な頭突きをかましたのです。
母は痛みと驚きに何が自分を攻撃したのか、確認するかのように振り向きました。
その母の足元を掬うようにもうひとつの鹿さんが身動ぎをした刹那、母はバランスを崩して倒れかけました。ハッとして支えようと私が駆け寄ろうとしたとき、母は咄嗟にすぐ横にいた鹿さんの背中に手を置きました。
これで倒れないで済む、と思った次の瞬間でした。
鹿さんに体重をかけてはいけない、と無意識に思ったのか、母が慌てた様子で逃げもせずに母の手を受け止めていた鹿さんの背中から手をどけてしまったのでございます。
あっと思う間もありませんでした。
それはもう見事にすってんころりんと母は芝生の上に転がりました。
ミニスカートを穿いていたら何もかも全開の勢いで転がりました。母はパンツスタイルでしたのでなにも公開せずには済みましたけども。
しかも転んだ先には暢気に座っていた鹿さんがいて、しかもその鹿さんも逃げることなく母を背中で受け止めましたので、派手な転び方の割には大きな怪我もなく母はむくりと起き上がりました。
すべてが一瞬の間のことで、助けようと差し出した私の手が虚しく空を掴んだまま、一時その場の空気が凍り付いておりました。
笑うに笑えず、プルプルと震える私の前で、母は頭突きをかました鹿さんに文句を言っておりました(笑)
奈良の鹿さんは比較的鹿せんべいが絡むと攻撃的でございますので、ご注意くださいませ。
その一部始終を見ていたらしい「なら仏像館」の出入り口に立っていた警備員の男性が大爆笑していたのは言うまでもありません(笑)
笑う前に助けてくれてもいいじゃない?と思わなくもなかった私は今日も元気に焼いております。
鹿吉のサブレは完全無添加、使うフレーバーは素材そのものを使用した焼菓子です。
バターの香りが芳醇な贅沢なサブレとなっております。
是非一度ご賞味くださいませ~
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ありがとうございます。
ちなみに奈良の鹿さんに襲われている姿はよく見ます。
遠足で来た幼稚園の子供のお弁当を奪っていたり、外国人観光客の支払おうとしているお札を奪って食べていたり、道を見るために広げた地図を端からむしゃむしゃと食んでいたりしております。頭突きも噛みつきも日常茶飯事の光景です。
売店で札で支払わず、小銭で支払うと
「お客さん、奈良に慣れてるね~」
と褒められるくらい鹿さんはお札を食べてしまうことも知っております。
だから私はかなり気を付けて奈良市内を歩くのですが、祖母はその限りではありませんでした。
父と祖母、私の三人で奈良を訪れたことがあるのですが、そのとき東大寺南大門で祖母は鹿さんに襲われました。
私との小旅行で気合が入っていた祖母は一張羅か!とツッコみたくなるようなスーツをバリっと着こなしておりました。
ゆったりとした動作で祖母に近寄ってきたひとつの鹿さんが南大門から東大寺さんを感慨深げにため息を吐きながら眺める祖母のスーツをがぶりと食べ始めたのでございます。
今思うとなぜ祖母のスーツを食べようと思ったのか、まったくわかりません。
良い匂いのする食べ物を持っているわけでもなく、鹿せんべいを買ったわけでもなく、ただそこにいただけなのに、祖母はスーツを食べられました。
驚いた祖母は「なにをするんだ!」と一言、奈良では神聖とされる神の使いでもある鹿さんをばしりと一発叩きました。
むしろ私はその行為そのものに驚きました。
叩かれた鹿さんは「ちっ」と舌打ちでもしそうな態度で、やはり悠然とその場を去っていきました。祖母はぐっしょりと鹿さんの唾液で汚れたスーツを払いながら一頻り文句を零しておりました。
奈良では鹿さんは害すると罰金刑が処されるくらいには神聖視された存在です。
祖母が食べられたことよりも、その神の使いを叩いたことのほうが私にはショックで、警察がいないか、秘かに周囲を覗ったのは仕方のないことだったでしょう。
ちなみにちょっとした蘊蓄をひとつ。
奈良のお店は早朝から開きます。
それはなぜ?と私はお店の人に聞いたことがありました。
するとお店の人は内緒話をするように声を潜めて、楽しそうに答えてくれました。
「朝起きて、店の前で鹿が死んでるときがあるんやけどな、処理やらなんやらで大変なことになるもんやから、そっと横にズラしておくねん」
本当かどうか、それはわかりませんが、とにかく鹿の処理には罰金も伴うらしく、店先で死なれているのは非常に都合が悪いそうです。
ですから横へとズラす、すると横のお店の方も早くにお店を開けて鹿を見付けて横へズラす、ということをしているうちに段々とお店を早くから開けるようになったのだとか。
まさに奈良ならではの話です(笑)
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました!
また明日もいらしてくださいませ~♪
心よりお待ちしております。