二年半の時間をかけて、紆余曲折を繰り返し、たくさんの人たちとともに『ひかりのおと』という映画を作った。酪農家を主人公にした映画である。
僕は真庭という土地に来て、トマトを作り始めた。農業に携わるようになって多くのことが変わった、考え方も変わった、と思う。
本当はどうかわからない。いろんな思考回路によって、いろんなことは断言できないし、定着なんてしない。変わるし、変わらない。
妥協や、錯覚の中、いいかげんに生きているのかもしれない。
六年前、京都に暮らしているとき、食べ物を一から作ることを経験しないで、いかなる表現も行うべきではないと思った。それは確か確かである。いま、半人前の農家であるが、一から食べ物を作っている。また、その合間を縫って映画も作っている。生き方というものは自由なようで自由ではなく、まあ何となくいくつかの横槍を受けながら、数少ない選択肢を山勘でチョイスしている。

なぜ映画をつくるのですかと聞かれることがある。そのほとんどはじめっとした経済の損得ばなしなのであまり答えない。なぜ生きるのですかと聞かれることと同じですよ。と、返答していたこともあったが、いまは正直まったく分からないです。小さな身体のしぐさから、ものを作るという行為、人生にいたるすべての「動き」をさまざまな「枠」をもって捉えようとしたがることは本当に不毛なので、あほなので、いまはそれこそ自由でありたいと思っているのだが、やっぱり山勘のチョイスぐらいしかできず、なかなかその類の質問に言葉が出てこない。

そんなことを繰り返し、一厘の一瞬の喜びのときを探しています。
農業と映画作りは似た作業だと思ってきた。それは今も変わっていない。だが言っておくがそのどちらもそうとうの複数のイメージを持つ行為なので、単純にいま僕がやっている行為は理解されない。しかし魔法の濾紙で抽出できた何かとは、このブログである。『ひかりのおと』という映画の存在の根幹、あるいは僕自身の使命の根幹は、この行為であるように思う。

2011年9月16日
脚本・監督/農家 山崎樹一郎



2月15日のリーダース勉強会は、

映画「ひかりのおと」プロデューサーの桑原広孝さんをお迎えします。

さいたま出身の桑原さんが、映画製作のために岡山県真庭市に移住したのはなぜ?

岡山県真庭市でトマト農家を営む山崎樹一郎監督ってどんな人?

そして映画「ひかりのおと」の撮影裏話や、真庭のこと、酪農家の方たちの暮らしや地域の生活と都会の違いなどを聞いてみたいと思っています。

また、プロデューサーとしての苦労や、どうやってプロデューサーになるのか(なったのか)なんていうお話もうかがってみたいと思います。

映画の予告編の上映も予定しています。

◆日時 2013年2月15日午後6時から午後9時まで

◆場所 女性就業支援センター
    http://www.joseishugyo.go.jp/shisetu/access.html

◆参加費 3000円(お土産つき)

詳細はコクチーズ・サイトで。