近所の飲み屋で、シュウカツ中の女子大生に会った。


「毎日、毎日、何のためにこんなことをやっているのか」とボヤいているのだけれど、

「私には夢があるから、がんばれる」と、クチでは元気。


じゃあ、夢って、なに?

有名企業に入ること?

それって、単なる収入源の確保ってことじゃん?


「いや、別に、有名企業じゃなくてもいいんですけど」


企業に就職したからって、

やりたい仕事ができるって保証されているわけじゃないし、

大きい会社になればなるほど、

どこの部署に配属されるかわからないし、

それで、いったい、なにが夢だっていうわけ?


やりたくなければ、やらなきゃいいじゃない。

シュウカツなんかしなくたって、

仕事はたくさんあるし、

「これをやりたい」と思えば、

現場に行くのが一番じゃないの?


「えー、でもぉ、シュウカツは大学生が通らなくちゃならない道だし」


そんなこと、いったい誰が決めたのさ?


同席していた彼女のお母さんによれば、

彼女はとても優秀なのだそうだ。

だから、

つらくてもがんばって就職しておけばいいと

親子揃って、思っているらしい。


世間で敷かれたレールにのって、

安泰の人生が送れるなら、

それに越したことはない。

でも、

就職する前からボヤきまくりでは

なんだかかわいそうな気がしたのだけれど、

あとでよく考えたら、

彼女はボヤいていたのではなくて、

彼女なりの自己アピールだったのかもしれない。


若くて、

きれいで、

周囲がちやほやしてくれるときは案外短い。

だから、せめて、

悩んだり、グチったり、ボヤいたりしてシュウカツなんかしてないで、

能天気に恋などしているほうがいいように思うのだけれど。