今年はいよいよ弊社にとって、動画勝負の
年になります。
下期だけで70億円の先行投資を行うこと
は既に発表済みですが、不安はないと
言えばうそになります。
先日撤退を発表していたNOTTVの累積損失
(報道によると500億円以上)には背筋が凍る
思いがしました。
かつて、ゼロからGyaO!を立ち上げていた
有線ブロードネットワークス宇野社長(当時)
の生みの苦しみは、間近で見ていて
胸を締め付けられる思いでした。
もちろん弊社でもいくつかの動画事業
の苦い思い出があります。
ブロードバンド普及字を狙った「メールビジョン」、
Web2.0初期に立ち上げた「アメーバビジョン」、
Ameba芸能人ブログ強化で立ち上げた「アメスタ」、
致命的な失敗は避けましたが、ほとんどが
赤字のまま撤退を余儀なくされています。
唯一黒字化したアメスタも、現在テコ入れ、
再出発の準備中です。
だから、動画事業の難しさは私自身が
百も承知のつもりです。
年末に「虚妄の帝国の終焉」という本を
読み返しました。
- 虚妄の帝国の終焉 ネット革命の旗手、AOLの栄光と挫折/ディスカヴァー・トゥエンティワン
史上最悪のM&Aと言われた、
AOLとタイムワーナーの合併について - 書かれた本で、今から10年前に
発売されています。
この合併が決まったのはネットバブルの - 2000年前後です。その後、日本で
ライブドアのニッポン放送株取得が
起きましたが、現在に至るまで、
インターネットと旧来メディアの
新旧メディアの融合は様々な会社が
挑戦していますが、なかなかうまく
いっていません。
しかし、AOLタイムワーナーの合併から
15年経ち、現実的にタイムワーナーが
傘下に抱えていたテレビ、雑誌、音楽は
軒並みインターネットに顧客の時間を - 奪われています。
いま足元はそれが加速度を増していると
言ってもいいと思います。
インターネット企業と組むことで変わろう
したジェリー・レビン元タイムワーナーCEO
の発想は、ものすごく長い時間軸で - 捉えれば正しかった面もあったのかも
知れません。
ただ、タイミングが早すぎたのだとしたら、
いつだったら正解なのでしょう。
翻ってインターネット側である我々は、
インターネット上で、メディア、広告、
コンテンツといった事業を展開しています。
一方で、通信インフラやデバイス、OS
といったインフラ事業には手を出さない
ことにしています。
だから、参入のタイミングはユーザーの
環境変化に合わせるしかありません。
そのタイミングを見極めるにあたって、
私は最終意思決定者として
いつも心がけていることがあります。
それは、自分が常に一般ユーザーよりも
少しだけ早いユーザーであること。そして、
その自分が自然と使うようになったタイミング
を見逃さないことです。
確かにインターネットは旧来メディアから
顧客を奪っていて、 - 同じ高品質な映像コンテンツを流すことが
- 技術的には可能です。
それに高機能デバイスと、高速回線が
あれば普通のユーザーもインターネットで
動画を視聴してもおかしくはない、
理屈で考えると勝機があるようにみえます。
でも、それだけでは大きなリスクを負って
動画事業に本格参入するには不充分だ
と私はずっと思っていました。
なぜなら、普通のユーザーであるはずの
「自分が」、インターネットで動画をあまり
見ていなかったからです。
大事なタイミングを見極めるのに、これ
以上肝心で決定的な理由が他にあるで
しょうか。
それを変えたのはやはりスマホでした。
FacebookなどSNSのインフィード再生に - に違和感がなくなり、スマホデバイスが
- オーディオプレイヤーのようなので、
- テレビ代わりにYoutubeやニコ生を見る
ことも普通になりました。
これを私は「シグナル」と捉え、動画や
音楽事業に本格参入を決意しました。
今から2年前の話です。
方向性が決まると、一気にそこへ集中
し始めるのは弊社の強みのひとつだと
思います。
既に渋谷クリップクリエイトやサイバーブル
などの動画関連子会社が多数設立され、
社内のあちこちの部署で動画の専門部署
が新設されており、すっかり臨戦態勢が
出来上がっています。
「動画元年」という言葉はインターネット業界
では過去に何度も使われていて、
一体いつなんだという状態ですが、
弊社にとっては2016年が間違いなく
元年です。
1月、2月と重要なリリースを控えており、
不安と期待が入り混じった状況で新年を
迎えましたが、もうやるしかありません。
2016年は大きな飛躍の足場を築きあげる
年にしたいと思います。
皆さま、今年も一年よろしくお願いいたします。