このサイトより転載しました

イベントどうなる!? あるライブハウスが取った行動
http://www.excite.co.jp/News/bit/E1300704755797.html
2011年3月22日 10時00分
当日の様子を再現。最低限の電力でイベントは行われた。


未曾有の大災害が東日本を襲った3月11日。15時43分、ツイッターのタイムラインには一つのつぶやきがあった。
「皆さん無事でしょうか? 僕は大丈夫です。ただ電話が繋がらない…」
次の日には、このようなつぶやきが。16時48分のものである。
「明日の『This Is Pop(公演名)』なんですが、今もろもろを調整中です。自分の中でもとても揺れている部分はあるんですが冷静になってもう少し時間をかけて結論を出させてください」
上記に引用した二つのつぶやきは、東京にあるライブハウス「高円寺CLUB LINER」のスタッフ増沢さんによるツイッターでの発言。翌日に控えるイベントをやるかどうか!? 増沢さんは選択に揺れていた。

ライブハウスといえばただでさえ薄暗く、怖いイメージを持っている人も少なくないだろう。電気不足も深刻な現在、鮮やかな照明の中で大音量を放つライブハウスの活動は、派手に電力を消費しているように見えるのも事実。余震も続く状況とあって、地震の二日後である3月13日も都内のほとんどのライブハウスは公演を自粛していた。
高円寺CLUB LINERも自粛するつもりだったらしい。そんなお店の気持ちを変えたのは、“(アンプなど電気を消費するものを極力使わない)アンプラグド形式でもライブができますよ!”という出演者の声。そして、約四時間に及ぶ沈黙の後、増沢さんはこうつぶやく。
「よし、私は前を向こう。精一杯やれる事を頑張ろう。顔を上げて前を向くぞ!」
こうしてイベントの開催が決定した。

自身もバンドマンである増沢さんは、演者であるミュージシャンたちが不安を抱えながら日々を過ごしていることを痛いほどわかっていた。
「ほんとは自分も歌いたいな、って思っていました。不安なとき人前で歌うだけで自分の気持ちも楽になるんです」(高円寺CLUB LINER増沢さん)
でも開催を決めた理由はもちろんそれだけではない。
「当たり前ですが、皆さんの安全が一番大事。
ただ、これからどうなるかわからない状況で、普段のようにライブが見れず、お金が回らない流れを作ってしまうと、うちのような小さなライブハウスはすぐに潰れちゃうんですよ。だから、お店を動かしていかないと、という現実的な理由もあって……」

イベント当日は、緊急時に備えたアナウンスの他、スムーズな避難ができるようドアを開いたままにし、最低限の照明の中、アンプラグド形式でのライブが始まった。急遽集まった様々なバンドマンや増沢さん本人もライブに参加。大きなトラブルもなくイベントは無事に終了した。感想を聞いてみた。
「すまない気持ちと嬉しい気持ちが入り混じって涙が止まらなかったですね。もちろん今でも不安です。でも機材が使えなかったり不十分な状況でも、お互い顔が見える場所で歌ったり聴いたりして繋がってる気持ちを得られる経験は、意味のあるものになったのでは、と思っています。
ライブハウスを維持するためには、売り上げの一部しか募金できませんが、これからも可能な限り、“普段と同じ”なライブハウス活動を続けていきます!」

インタビューが終わり、当日の公演の準備に走っていった増沢さん。その迷いのない背中に胸が熱くなる思いであった。
(小島ケイタニーラブ)