母として本当に情けないのですが
私は最後まで娘の側についていることが
できませんでした。

代わりに主人が娘に付き添ってくれましたが
それも病棟入口まで。
職員と交代になり
病棟中には入れなかったそうです。

主人が戻ってくると入院の事務手続きで
様々な書類の説明を受け署名しました。

しかし度々職員がやってきて

「興奮が強いので安定剤の注射を打ちます」

「着替えを嫌がるので服を切断しても良いですか?」

あげく

「来てきた衣服の紐で首を絞めようとしたので身体を拘束します」

と信じられない報告が続きました。

それに対して
私達が冷静に判断できるはずもなく
ただただ項垂れた頭で頷くのが精一杯。
説明された内容のほとんどは
頭に入っていなかったと思います。

最後に「医療保護入院同意書」がありました。

………署名したくない。。。
助けを求めるように
ケースワーカーに声をかけました。

「このままでは娘が死んでしまうと思い
入院覚悟でこちらにきました。でも
今は本当にこれで良いのかと迷っています」

…それに対するケースワーカーの答えは
とても事務的でした。

「事故がない様私達も最善を尽くします」

もう後戻りできないんだなぁ…
覚悟を決めるしかないんだなぁ…
覚悟というよりは
諦めに近い無力さを感じながら
力なく震える手で署名しました。

娘が凶暴な子だと思われて
乱暴に扱われるのを恐れてた私は
看護師さんに
「普段はおとなしくて優しい子なんです。
とても寂しがりなんです。ハグや握手を求めてきたら応えてやってください」
と親バカな懇願をして病院を後にしました。

主人が運転する帰りの車内でも
私の涙はとまりませんでした。

「これでやっと治療が受けられる
辛いけど娘は今生きている
命をとりとめることができた
これで良かったんだよね?」

と尋ねた私に主人は

「無理矢理入院させた親を憎むことを
生きる糧にして生きて欲しい。
一生恨まれることを覚悟している」

とハンドルを握りながら固い表情で答えました。