第十四場 八月七日夜分・立飲み横丁
三澤の一件が落ち着きを見せて約一か月。
感染状況も落ち着きを見せ始め、的屋稼業も軌道に乗り始めていた。
今日は三年ぶりの花火大会が観客の制限もなく始まったのである。
一同 「玉屋!」
フィナーレの連発。
興奮し嬌声を上げる一同。
花火終了。
無音の瞬間。
拍手おこる。
幾久 「いや、やっぱり見事なもんだね」
綾子 「やあ、いかったね。」
由紀 「三年ぶりの花火大会だもの。ホント、散々待っただけの事はあったわよ」
健三 「そうだな、やっぱり華やかなもんだ」
今日は瀬村組のお疲れ会。
皆それぞれに楽しんでいますが、凛子や大輔は浮かない顔でいます。
大輔 「とうとう間に合わなかったな」
凛子 「どうしたんだべ、花火までには来れるって言ってたのに」
誠 「三澤さんですか」
大輔 「ああ、花火までには来れるって連絡あったんだけどな」
凛子 「川北の花火は特別だからね、見てもらいたかったな」
誠 「本当にそうですよ。われわれも後援している道東一の花火大会ですからね、見てもらいたかったなあ」
三澤は今日も他の露天商組合との打ち合わせの後、間に合う様に来るはずだったんですが・・・
連絡もとれないので乾杯の練習をすることにします。
健三 「始めに日曜日にも関わらず店を開けてくれた、姐さんと綾ちゃんに感謝します。有難うございます」
一同 「(二人に)有難うございます」
幾久 「いえいえ、とんでもない」
綾子 「恥ずかしいよ」
健三 「的屋瀬村組が三年ぶりに活動を再開したのはほんの二ヶ月前だった。再開できるかどうかわからない状態の中、ようやく開催した海道神社の例祭に始まり以来二つの祭りと三か所の縁日をなんとかこなす事ができた、これもみんなの協力の賜物と思ってる。有難う」
健三 「まだまだ、どうなるか分からない状況だが、とにかく普通の生活に戻そうというのがお上の考えらしい。だから祭りや縁日はこれから普通通り開催される予定だし、まだ来てないが三澤さんが持ってきた十月の大きな仕事もある。それをやり切れるようにみんな祈ってくれ。今日は何というか、まあ、これからも頑張ろうって会だ。今日は来れなくても戻りたいって言ってきてるのも結構いる。みんなで力合わせて頑張ろう」
一同 「ハイ」
幾久 「あら、いいご返事だね」
健三 「そう言う訳で、乾杯!」
一同 「乾杯!」
後は三澤に到着をまつだけなんですが・・・
第十五場に続く。
撮影鈴木淳