七十歳であるという事 | 序破急

序破急

劇団芝居屋を主宰しています。50年以上携わって来た芝居のあれやこれや、また雑感などを書き散らしたいと思っています。

 

ミスターのあの有名な台詞ではありませんが、初めての七十歳を迎えて2週間経ちました。

芝居漬けの生活から目を転じて、七十の自分というものを客観的に見る事が出来るようになって来ました。

すると、この歳になると随分いろんなものと別れねばならないのだということが分かってきました。

一昨年の夏に母を送りました。

90歳でした。

母の存在はあの世とこの世の境に立つ大きな壁でした。

その壁が姿を消し、私はあの世の入り口と対峙せねばならなくなったのです。

と、まあそんな感想を持って古希を迎えました。

ああ、その前に古希を目前にして、友であった阿藤快が一足早くあの世に旅立ちました。

それから運転免許証の書き換えの通知が来ました。

そこには高齢者の車の事故が多発している為、書き換えの際には実技の検定があると書かれたありました。

最近はペパードライバーの私です、実技試験はゴメンです。

早速免許証を返上しました。

その代わり私の手元には運転経歴証明書というものが送られてきました。

この男は過去に車を運転したことがありますというカードです。

外形は運転免許証と変わりません。

ですが車の運転がもう出来ません。

何か大きなものが消えたような喪失感がありました。

国民健康保険高齢受給者証というのがこました。

この人は年寄りだから少し安く治療を受けられますというものです。

アリガタヤ、アリガタヤと言っておきましょう。

ああ、シルバーパスが使えるようになりました。

まあ、交通費というのは馬鹿になりませんからね。

少し遠い目をしてみると、出会いより別れが圧倒的に多いですよね。

うるさい先輩や尊敬する先輩。

もはや往年の元気はありません。

喧嘩すべき人間にいなくなってきました。

輝かしい思い出も時間の奔流に忘却の彼方へと流されつつあります。

でもね、少し抵抗しようと思ってます、私の立ち位置には芝居というものがあり、私は今もそこで生きているのですから。

まだ、私はここにいるぞと声を上げ続けようと思っています。