『免疫の守護者
制御性T細胞とはなにか』(坂口志文  塚﨑朝子著)を読みました。
内容の濃い本でした。早速、備忘録に。

坂口先生は臨床医ではなく、基礎免疫学の研究者。制御性T細胞(Tレグ)を発見された。
現在は大阪大学  免疫学フロンティア研究センター特任教授を務める。

制御性T細胞(Tレグ)は、胸腺(Thymus:サイマス)という胸骨の裏側にある臓器で作られる。頭文字「T」をとって、そう呼ばれる。
T細胞は、すべて胸腺由来。
B細胞は骨髄(Bone marrow)から…。


免疫の攻撃パターンは大きく別けて2つ。
①細胞性免疫(感染場所を局所的に攻撃)
    1型ヘルパーT細胞(司令塔)
                  ↓抗原を認識し、攻撃指示
          キラーT細胞(狙撃手)
 ※抗原は、病原体などの異物。

 ②液性免疫(体液を介して、抗体を全身に広げる)
     2型ヘルパーT細胞
                  ↓サイトカイン分泌
             B細胞が抗体を量産
 ※サイトカインは情報伝達や指示命令をする。
 ※抗体は抗原に結合し、相手を無力化させる。                
異物に対して攻撃するのは、それらが持つ抗原を認識して、「非自己」(自分の体の細胞ではない)と判定することによる。
攻撃は強すぎると、自分の細胞にもダメージを与えてしまうので、抑制が働くことでバランスを保つ。
これが制御性T細胞(Tレグ)の役割。
Tレグは免疫暴走のなだめ役。

・免疫バランスが崩れて、発症する疾患
アレルギー反応の典型である花粉症。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)など。

・ 自己免疫疾患
上記の疾患は対象が「非自己」であったが、「自己」を異物と見なし、攻撃して発症する疾患。
(例)関節リウマチ、1型糖尿病…等々
ちなみに、印象派の画家ルノワールも関節リウマチで苦しみ、晩年は変形した指に包帯で絵筆をくくり付けて、絵を描いたのだそう。

原因
Tレグの数が減少したり、機能低下を起こすと 、免疫を抑制できなくなる。
一部にFoxp3遺伝子変異が関わっている。

・アレルギー疾患や自己免疫疾患に対する治療の現状 
ステロイド薬や免疫抑制薬などが、症状を一時的に抑える。
しかし、長い期間の投与となったり、免疫を一気に抑え込むため、免疫バランスを乱してしまう。感染症リスクや副作用が生じる。
薬剤を使わずに、体にもともと存在し、相性の良いTレグに着目した治療法が検討されている。

長くなりました。
「制御性T細胞でがんに挑む」は②で。



柴犬ポチ🐶