こんばんは。
昨日は父の1周忌法要。少しご無沙汰していることを墓前に詫びてきました。
1年がたつのは早いものです。

さて、その前日の土曜日は、神奈川県立がんセンター主催の市民講座を聴きに横浜まで行ってきました。
タイトルは、
『がんゲノム医療~がん患者の個別化治療への期待~』

内容は、ゲノムの理解から始まり、がん遺伝子検査および各診療科ごとのゲノム医療の現状について等、多岐にわたりました。


⚫️まず知ろう「ゲノム」のこと
      臨床研究所所長   宮城  洋平先生

『ゲノム』とはヒトの体の設計図(遺伝情報)で「A」「G」「C」「T」の4種の文字で書かれている。(大雑把ですみません)
人によりこの文字の並び方が異なる部分があり、これが「ヒトの個性」(多様性)で、抗がん剤の副作用の現れ方が違ってくる。(イリノテカンにおける下痢など)

ところで多くのがんは、環境要因が引き起こすと言われる。
その主だった原因は、
① 喫煙  30%
② 食生活  30%
③ 運動不足  5%
④ 職業環境  5%
…など。

つまり、環境要因が作用→遺伝子異常→がん化
遺伝子異常は、もって生まれた上記の「ヒトの個性」の配列等に異常をきたす。
遺伝子異常の多くは体内で自然に修復されるが、修復されない変化が何度も積み重なると、がんが発生する。
これも多様性があり「がんの個性」を決めている。
がんの個性 とは
・がんの種類によって異なる(肺がんvs大腸がん)
・同じ種類のがんでも異なる(Aさんの胃がんvsBさんの胃がん)
・同じ患者の「がんの塊」の中でも違う(断面でみると様々ながんが混ざっている)

がんがシツコイのはその複雑さによる。
誰もが簡単に遺伝子検査を受けれるよう、実現のピッチをあげてもらいたいと切に願う。


『ここまでわかってきたがんとゲノム異常』
⚫️肺がん
     呼吸器内科医長   齋藤 春洋先生

リンパ節や他臓器に転移がある「進行肺がん」。手術や放射線治療ができないため、薬物治療となるが、
そのパターンは 3つ。
① 細胞障害性抗がん剤(主に点滴)
② 免疫チェックポイント阻害剤(点滴)
③ 分子標的薬(内服)→ゲノム異常がある
(ドライバー遺伝子陽性)

※ドライバー遺伝子は、細胞のがん化に直接重要な役割を果たす遺伝子で、分子治療の標的として有望なもの。

遺伝子変異の種類と頻度、および対応できる分子標的薬  ※主に肺腺がん
①EGFR遺伝子変異  30-40%  
イレッサ、タルセバ、ジオトリフ、タグリッソ、ダコチニブ
②ALK融合遺伝子            5%  
ザーコリ、アレセンサ、ジカディア、ローブレナ
③ROS1融合遺伝子         1%  
ザーコリ
④BRAF遺伝子変異         1%  
タフィンラー  /メキニスト
⑤その他の稀な遺伝子変異(HER2等)  数%未満  
治験が行われている場合がある。

肺がんの薬物治療に臨む時に、担当医に聞くべき3つのこと。
・自分の肺がんはドライバー遺伝子があるか。
・可能性のある遺伝子は全て調べているか。
・稀な遺伝子を調べて治療できる可能性はあるか。(LC-SCRUM、NCCオンコパネル)


⚫️大腸がん
     消化器外科部長   塩澤  学先生

進行大腸がんにおける化学療法
・抗がん剤(キードラック)
5FUとイリノテカンまたはオキサリプラチン。これ以外にTAS102。
・分子標的薬
VEGF…ベバシズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプト
EGFR…セツキシマブ、パニツムマブ
Multi…レゴラフィニブ

大腸がんの性格は見た目ではわからない。
今までは、見た目のがんの形や大きさ、顕微鏡での形態から判断していた。
しかし今、遺伝子レベルで診断すると、がんの塊は、バラバラの性質、性格をもつがん細胞が集まっていることが判る。
例えば、
・肝臓転移しやすいがん細胞A
・肝臓転移しないおとなしいがん細胞B
・抗がん剤が効かないがん細胞C
・抗がん剤が効きやすいがん細胞D
4種の細胞は遺伝子が違う。
遺伝子変異をみて、抗がん剤や分子標的薬の適用を検討する。

現在、大腸がんの治療で参考にしている遺伝子
① RAS遺伝子変異の有無…分子標的薬が効く人か、効かない人か
② BRAF遺伝子変異の有無…抗がん剤が効きやすいか、効きにくいか
③ MSIの有無…免疫抗体が有効な人か、
無効な人か(昨年12月保険適用)
④ UGT1A1変異の有無…イリノテカンに強い人か、弱い人か

様々な「がんの個性」を解き明かして、より良い治療に速やかに進むためにも、ゲノム医療の役割は大きい。

ちなみに、私は原発大腸がんを切除した時、リンパ転移がないことに加えて、基本の抗がん剤を予防のつもりで服用し安心していたのだが、服用中に肝転移となってしまった。
遺伝子検査はできなかったので憶測に過ぎないが、今回の話を聴くと、自分も薬が効きづらい遺伝子であったのかもしれない。 

まだ、この「がんゲノム医療」の話は続きますが、とりあえず今日はここまで。





柴犬ポチ🐶