人生100歳時代の強敵!
すい臓がん  がんロコモを攻略する!!

この土曜日に、シンポジウム参加で神奈川県総合医療会館(横浜)に行って来ました。
『すい臓がん』については昨年も聴講してますが、
『がんロコモ』は日経メディカルで知り興味がありました。



『すい臓がん』
~治らないがんから治るがんへ~
静岡県立静岡がんセンター
病院長代理  兼  肝胆膵外科部長  
上坂  克彦  先生

2017年がん部位別死亡数(男女計)
1 肺    2 大腸    3 胃    4 すい臓    5 肝臓

・すい臓の位置と構造
胃の背中側に存在する15㎝ほどの細長い臓器。
肝動脈、門脈等重要な血管が隣接。

・症状
初期症状はなし。  
進行により腹痛、背部痛、黄疸、体重減少など。糖尿病の急な悪化は要注意。

・膵がんの分類法
切除可能(①遠隔転移なし②動脈等に広がっていない)
切除不能(①遠隔転移あり、あるいは②動脈等ががんに巻き込まれている)
切除可能境界(①遠隔転移なし②動脈等にがんが接する)

1.  切除可能膵がんの治療
術前治療の研究開発がされている。
S-1併用放射線療法と、ゲムシタビン+S-1併用療法の臨床試験比較。
後者の治療成績が良いことが判明。

 術後補助化学療法はS-1単独療法を推奨。 

2.  切除不能膵がんの治療
化学療法が治療の主体。2018.12月に新たにペンブロリズマブ(キイトルーダ) が承認された。抗PD-1抗体薬。
標準治療終了後に、マイクロサテライト不安定検査陽性の患者に適用。

①切除不能が切除可能になった症例
68歳男性。
2015年6月  他院で、遠隔転移(大動脈周囲リンパ節転移)を有する膵体尾部がんと診断。
2015年7月~2016年1月  他院で、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法
2016年2月 当院へ紹介。手術(膵体尾部切除)


②切除可能境界膵がんの治療症例
?歳女性
上腸間膜動脈に接する。門脈浸潤。
腫瘍マーカー
                  初診時       S-1+放射線治療後
CEA              3.3                      2.3
CA19-9        652                    169
膵頭十二指腸切除、門脈合併切除・再建
手術時間5時間52分。
術後6年2ヶ月現在、再発なし。
キャリアウーマンで現在も元気に働いているそうです。


『がんロコモティブシンドローム』
~がんになっても動けるように~
国立病院機構東京医療センター
整形外科医長・骨軟部腫瘍センター長
森岡  秀夫  先生

がんロコモとは…
がん自体あるいはがんの治療によって、骨・関節・筋肉・神経などの運動器の障害が起き、動けなくなる状態。
介護リスクが高まる。

1. がんロコモの治療
①手術治療
整形外科が行う骨転移の手術に以下の指標が使われる。
・ 新片桐スコア…全身状態を判断
・ MireIsスコア…骨折の起きやすさ
・ Frankel分類…脊髄麻痺の程度
一例として
新片桐スコア(合計10点中)
原発巣(増殖が遅い0点・中間2点・早い3点)
内臓転移(結節性1点・播種性2点)の他、
検査データ内容や、化学療法の有無…等
・3点以下
長期間固定性が期待できる再建法(根治的手術)
・7点以上
侵襲の少ない治療法(姑息的手術)
②骨修飾薬
骨転移で骨が弱くなるのを防ぐ薬
・ゾレドロン酸
・デノスマブ など。

2.  がん治療に関連した骨粗鬆症の原因と治療
・前立腺がんや乳がんで行うホルモン療法
・化学療法に併用されるステロイド(吐き気止め)
→急速に骨粗鬆症が進行。
・ビスフォスフォネート製剤で対応する
(アレドロン酸やミノドロン酸など)

3.  抗がん剤による末梢神経障害の治療
薬物療法
・プレガバリン
・VB12
・牛車腎気丸
・抗けいれん薬
・抗うつ薬
・Cox2阻害剤など。
リハビリ
・ROM   Ex
・保湿
・マッサージ

4.  がんに隠れたロコモの見きわめ
「がん」は通常の医療行為に先入観を与えてしまう。がんの痛みだと思ったら、全く別の疾患、変形性関節症や脊柱管狭窄症であったりすることも多い。

症例  肺がん82歳男性
PET検査で頚椎に集積があり光っている。痛みを取る相談を受け、レントゲン検査をした所、頚椎の変形で頚椎症と診断された。

先生の病院では、骨転移に特化したキャンサーボードや骨転移外来も設置されている。
原発診療科の医師が知りたい情報として、
・骨転移の有無(診断)
・安静度は?歩行しても大丈夫か(管理)
・手術をしたらよくなるか(治療)
等に答えているという。
実際、前立腺がんや乳がん、肺がんの方の外来での受診が増えている。

がん治療(抗がん剤)には多くの副作用が伴うが、中でもつらいと思うのは、食事が満足に取れなくなることや、
ロコモにあるように筋肉の低下や神経障害で動けなくなること。
『がん治療』はチーム医療。
栄養管理と整形外科の専門チームが加わることで、がん治療の質をさらに向上して欲しいと願う。






柴犬ポチ🐶