こんばんは。
遅くなりましたが、先日行ってきたセミナーをまとめてみました。
横浜で行われた
『第3回多発性骨髄腫・横浜セミナー2018』です。
(少し前にリンパ腫セミナーもあったのですが、締切でした。本当に行きたかった!)
⚫️骨髄腫の検査・診断~何に注目すればいいの?~
横浜市立大学附属病院
臨床検査部長 山崎悦子 先生
多発性骨髄腫は、Bリンパ球由来の形質細胞ががん化する。
形質細胞は、通常、細菌などの異物に対し抗体で体を守るが、がん化した骨髄腫細胞は、ムダなMタンパク(腫瘍性の抗体)を作り続ける。
<症状>
1. 血球減少 貧血・めまい
2. 骨に障害 骨髄腫細胞が骨を壊す。
3. 腎機能障害 増加した Mタンパクが腎臓に目づまりを起こす。
その他、感染症等。
<診断時検査>
※骨髄腫の診断となる値
1. 尿検査(タンパク量)
2. 血液検査
・ 末梢血血算(貧血や血小板)
ヘモグロビン(Hb)<10g/dL※
カルシウム(Ca)>11mg/dL※
・ 生化学検査
① 肝臓や腎臓など臓器機能チェック
血清クレアチニン(Cr)>2mg/dl※
② 腫瘍量チェック
FLC比:腫瘍性と非腫瘍性の比、等。
3. 骨髄生検および穿刺:骨髄の骨髄腫細胞割合が60%以上※
4. 染色体分析(FISH検査):腫瘍細胞の染色体異常から悪性度を判定…予後を予測。
5. 全身骨画像検査(MRI):病変が2つ以上※
<治療奏効と腫瘍量>
・PRからsCRまで
診断時…腫瘍量1兆個
→部分寛解PR→非常に良い部分寛解VGPR→完全奏効CR1千万個→厳密完全奏効sCR
・ 微小残存病変(MRD)
sCRでも腫瘍細胞が残存。
新たな治療目標としてMRDに着目。
その評価を行ない、再発の早期予測や治療効果判定に役立たせる。
⚫️最新情報~治癒を目指して治療を受けるために~
東京大学医科学研究所附属病院
血液腫瘍内科 准教授 今井陽一先生
<治療薬>
・サレド
・レブラミド(レナリドミド )
・ベルケイド(ボルテゾミブ)
の基本剤に加えて、
・ポマリスト(ポマリドミド)
・エンプリシティ(エロツズマブ)
・ファリーダック(パノビノスタット)
・ニンラーロ(イキサゾミブ)
・カイプロリス(カルフィルゾミブ)
・ダラツムマブ(ダラザレックス)
他にステロイド薬デカドロン(デキサメタゾン)
<最新治療>
ポマリドミドの3剤併用(以前は2剤)
レナリドミド、ボルテゾミブが効かない再発・難治に対する治療薬。
・移植適用の場合の薬剤組合せ
初回 VRd療法
V…ボルテゾミブ
R…レナリドミド
d…デキサメタゾン
2次治療 PCd療法(またはPVdかPKd療法)
p…ポマリドミド
C…シクロホスファミド
K…カルフィルゾミブ
3次治療 DRd療法(またはKRd療法)
D…ダラツムマブ
※ 移植不適用はメモできず。
・CAR-T細胞療法がALL(急性リンパ性白血病)だけでなく効果が期待できる。
・末梢血液を利用した骨髄腫再発の診断
骨髄穿刺は苦痛が伴う。
腫瘍由来の遺伝子異常をもったDNAが採血で診断できる。
理化学研究所が研究開始。
⚫️会場からの質疑応答
Q. 細胞の顔が変わるとは、どういうことか。
A. 例えば、診断時に骨髄腫細胞がA細胞、B細胞、C細胞で占められたとすると、薬で狙ったA・Bは消失したが、Cが増加するという感じ。新たにDの出現もある。
再発を繰り返すうちに悪性度が上下し、使える薬剤も変化する。
Q. 完全寛解CRにならなければ、無治療か維持療法でよいのでは。
A. sCRでも腫瘍細胞はかなり残った状態。無治療でも本人の免疫で抑えられることあるが、Rd療法を1年半位でやり終えた人と、ずっと続けた人では、やはり後者の方が生存期間が長い。
Q. 血液検査の結果が良いのに骨病変が進行するのは何故か。
A. Mタンパクを分泌しない腫瘍細胞がある。骨髄腫細胞は、雑多な細胞集団。
骨髄の骨髄腫の遺伝子異常と、髄外腫留で胸骨に出来た遺伝子異常が全く違うこともある。
Q. 同種移植と自家移植との違いは。
A. 自分ではなく他人の造血幹細胞を使う。利点は、他人の造血幹細胞のリンパ球が腫瘍を攻撃してくれる。自家移植では得られない。問題は同種移植の骨髄回復が自家に比べ1週間以上遅れる。感染症が起こりやすい。同種移植は、若くて他の治療が効かない人に限定的に行う。
多発性骨髄腫は、完治が難しいと言われていますが、次々と治療薬が誕生してるようです。いい状態を長く保っていき、最後には、自己免疫で腫瘍細胞を抑えこむ力を皆さん持っていると、今井先生は仰有っていました。内科医ならではの発想だろうか。優しい言葉が心に響きました。
どうしたら免疫が上がるか、全てのがんサバイバーの命題。
貪欲に探っていきたいと思います。
柴犬ポチ🐶