こんばんは。
日曜日に東京・大手町で行われた、
『第16回 ペイシェント・アクティブ・フォーラム』
「がんの治る日は近いか!?-個別化医療の現実」に、参加してきました。





個別化医療は、その名前の通り、患者個人個人に最適な治療法を設定しようというもので、ゲノム解析や、プレシジョン医療(precision medicine)に期待が高まる現状があります。
今回のフォーラムでは、
プレシジョン医療の推進に取り組まれている中村祐輔先生と、「核医学診療」分野推進に取り組まれている絹谷清剛先生の講演を拝聴できました。


基調講演  1
『プレシジョン医療 :がん患者の人生の質向上に向けて』

公益財団法人がん研究会
がんプレシジョン医療研究センター所長
中村祐輔 先生

プレシジョン医療(3つの骨子)
1.   がん細胞を見つける(リキッドバイオプシー)
2.   最適な治療薬を見つける(分子標的薬)
3.   免疫療法を提供する

⚫️リキッドバイオプシーについて
血液、だ液、尿などの液体を使い、がん診断が可能。
肺・肝臓に針生検すると出血や空気が漏れる等合併症リスクあるが、血液の上澄みだけ7ccを使うので患者の負担が少ない。
・スクリーニング
リキッドバイオプシーの検出率(米国)
切除可能ながん70~80%検出できる。
成果順に挙げると、
1.  卵巣がん…沈黙の臓器。診断難しい。
2.  肝臓
    この2つはほぼ100%。
3.  胃
4.  膵臓
5.  食道
6.  大腸
     胃から大腸までは60~80%
7.  肺…60%
8.  乳腺  (数字をメモできませんでした)
因みに、肺がんの場合、がん研で行った59名中、53名に遺伝子異常が検出(90%)
乳腺も低いが、がん研ではもう少し高いとのこと。
・再発モニタリング
大腸がんステージ2の症例
外科手術後、一部の患者の血液中にがん由来DNAが検出された。術後に血液異常がない場合、経過観察だが、がん残存の治療に変更。早めの治療が治癒率を高める。ムダな治療もしないですむ。


⚫️免疫療法
がん細胞には、リンパ球(免疫細胞)とがんを守る細胞があり、割合は人それぞれ。因みに、がんを守る細胞数が多く、リンパ球が少ないと免疫チェックポイント阻害剤が効きづらい。実際の縮小率10~30%。
免疫チェック阻害剤は、直接がんを攻撃しないが、攻撃側のリンパ球に着目した治療法として、

・ネオアンチゲン療法
ネオアンチゲンは、がん細胞の遺伝子変異に由来する抗原。免疫はがん細胞の提示する抗原を目印として反応。ネオアンチゲンは、正常細胞には存在しないため、患者の遺伝子を分析し、遺伝子異常を内在したネオアンチゲンを使う事で、体内の「戦うリンパ球」を増やす。

FRIDAYに掲載された『福岡がん総合クリニック』森崎隆先生によるネオアンチゲン療法の事例が紹介。
卵巣がんで、腹水細胞診の変化。
明らかにがん細胞が減少。
ハードルは高そうだが、画期的な治療であることは間違いない。

・T細胞受容体導入T細胞療法
がんとリンパ球は鍵と鍵穴の関係。
くっつき、がんを死滅させる物質を放つ。
遺伝子レベルで解析した鍵穴を人工的に作り、患者のリンパ球に戻す。がんを攻撃するリンパ球が一気に何億個も作ることができる。

日本の医療の言う「エビデンスがない」とは、
⚫️効果がない
⚫️試験をしたが効果がない
以外にも
⚫️試験をしていないので効果が不明
が含まれる。

大抵の患者は、中村先生の元に辿り着く前にあらゆる抗がん剤を試したあとで、体力も残っていない方が多い。
ゲノム解析を元にしたがん治療は、がん医療費の抑制にも繋がるが、これには患者の参画が必要だと先生は話された。


基調講演  2
『核医学ってなに?がん診療における役割』

金沢大学医薬保健研究域医学系核医学教授    
絹谷清剛先生

核医学とは、
ごく微量の放射線を出す薬(ラジオアイソトープ:RI)を目印に病気の診断や治療をする医学。

・診断
X線、CTは病巣の形を診る(形態診断)
PETは病巣の性質が分かる(機能判断)
核医学は後者を指す。

・核医学治療
普通の放射線治療が、体の外から放射線を当てる「外照射」と言われるのに対して、核医学治療は※「内照射」(または「内用療法」)と呼ばれている。
つまり体の中から放射線を当てる。
※点滴やカプセルを使う。

がん治療は、外科手術・放射線・化学治療が3本の矢だと言われていて、そこに4本目の矢として免疫療法、そして5本目の矢が、この『核医学治療』とのこと。

核医学治療を使ったがん種
1.   甲状腺分化がん
2.   B細胞悪性リンパ腫
3.   疼痛性転移骨腫瘍
4.   前立腺がん骨転移
5.   悪性褐色細胞腫
6.   神経内分泌腫瘍(NET)
7.   神経芽腫
1~4は、すでに保険診療。
5.6.は企業治験。7.は先進医療

6. の、神経内分泌腫瘍に対してはペプチド受容体放射性医薬品治療(PRRT)。
PRRTは国内で実施施設がなく、患者がスイスまで行き、バーゼル大学等で治療を受ける現実がある。
既に100人以上になるらしい。

7.の高リスク神経芽腫を対象としたMIBG治療は、現在金沢大学附属病院でのみ実施されている。
奏効率CR50%、SD42%、PR8%。
完全寛解50%だが、効果は期待できる。


核医学には、医療法以外にも放射線を使用するために法律の縛りが多い。
しかしながら、政府答弁(?)で安倍総理が、
「放射性同位元素による内用療法を含む放射線療法の更なる充実については、重点的に取り組むべき課題」と語った。
(平成24年)
この言葉はとても重く、核医学の推進開発に重要らしい。
とは言え、政権が変わってしまうとどうなるかわからない。
2009年の政権交代時には、「最先端研究開発支援プログラム」として提供されるはずだった2700億が1000億に減らされた。「2位じゃダメなんですか?」の政党に。
対象の中には、iPS細胞開発もあった。
2位じゃダメどころではない。
失われた時間は金銭では購えない。

絹谷先生は国の当局に声を届けるために、新しい組織を作った。


一人でも多く参加して貰いたいとのこと。
一般会員は会費免除。
私も参加させていただきました。(微力)
どうか、ご一読お願いいたします。


今回もとても熱く勉強になる講義でした。





柴犬ポチ🐶