こんばんは。
さて、『ジャパンキャンサーフォーラム』の2日目。

講演を聴く前に、展示ブースへ。
『体成分』を測ってくれるブースがありました。血管年令・体成分・骨密度などをチェックしてくれるもの。
今までそんなことを調べたこともなかったので、若干不安ながら挑戦。
血管年令は実年令より少し年を取っていましたが、意外にも筋肉などは思ったより多かった!
もしかして、毎日の積み重ねのお陰かもしれない。益々、継続の意欲が湧きました(笑)




⚫️精神腫瘍学
『がん患者、ご家族の心のケアについて』
埼玉医科大学国際医療センター
精神腫瘍科  教授         大西秀樹先生

初めて、がん精神科の先生の話を拝聴。
とても気さくな先生で、冗談を交えながらの話。
所属大学はあの『チームバチスタの栄光』のロケ地なんだとか。調べてみたら『ジェネラル・ルージュの凱旋』。

がんは、患者だけではなく家族にも精神的に大きなダメージを与える病。
うつ病や、適応障害を発症する例も少なくない。

発症や再発の告知を受けた時の状態。
直後~1週目…衝撃で何も考えられない。
1~2週目…不安、うつになる。
2週目以降…周りが見え冷静になる。
人には適応力が備わっている。
戻らない場合は、病院へ相談を推奨。

うつ病になると、治療に対する意思に影響する。
例)乳がん患者が術後化学療法受ける割合
      うつなし…90%
      うつあり…52%
      ※うつだと前向きに治療しなくなる。

治療方法
1.   薬物療法 
集学的治療で様々な薬を処方されているため、必要最小限とする。
副作用(特に吐き気)に注意して処方。

2.   精神療法  (傾聴)
患者の話しを聞く→問題点が分かる(子供の教育や、配偶者のこと等)→解決手段を共に考え、患者の成長を促す。

体験談として、何人かの再発がん患者のエピソード。

「悔しい思いはみんな同じ。
    でもなった以上は仕方ない。
    この病気で強くなることができた。
    仲間に出会うこともできた。
    周りの幸せに気付くことができた。
    この病気に感謝することもある」

がんに罹患したことは不運ではあるが、不幸ではない、と。
PTG(心的外傷後成長)というもので、困難な経験による精神的なもがきや闘いの結果、生じるポジティブな心理的変容。

『最後の最後まで生きることを諦めない』

そして、ヴィクトール・E・フランクルの
『私たちは問われている存在』という言葉を仰った。
人は「人生とは何か」を問う存在ではなく、人生から生き方を問われている存在なのだと。

とても、深く心に響く講演だった。


ところで、講演の参加者の中にベビーカーを伴った方がいらして、なんとなく胸が痛みました。


⚫️これから始まるがんのゲノム医療

国立がん研究センター 研究所 
理事・研究所長
がんゲノム情報管理センター長 間野博行先生

国立がん研究センター中央病院  
副院長(研究担当)                           藤原康弘先生

まずは、ゲノムとは何かについて説明。

ヒトの染色体のうち、タンパク質を作るのは、約1.5%位。遺伝子数は約23000。この内500~600が細胞増殖に関わる。
体の細胞は、無闇に細胞増殖しないようになっているが、遺伝子に傷が生じると増殖スイッチが入ってしまう。
分子標的薬は、その増殖シグナルを断ち切る薬。
ただ、同じがんであっても、傷の有り様が様々なため、個々に特定しないと有効ではない。

ゲノム医療の口火を切った例として、
肺腺がんの症例。
細胞を増やす遺伝子ALKに、EML4遺伝子がつくと、新たな活性化EML4-ALK遺伝子となり、がん増殖を行っていく。

ALK阻害剤アレセンサの臨床試験では、
奏功率93.5%、無増悪生存期間>27ヶ月の結果が得られた。

ALK遺伝子が他の遺伝子と融合することにより、発症するがんは、

・肺腺がん            EML4-ALK 、KIF5B-ALK
・悪性リンパ腫    NPM-ALK、CLTC-ALK
・肉腫                    TPM3/4-ALK
・腎髄様がん        VCL-ALK

一つの遺伝子変異が、多くのがん原因となっている。優れたALK治療薬を作れば、皆が救われる。

また、一つのがんは、沢山の変異遺伝子によるがん集合体であることも分かった。
2004年は、KRAS遺伝子のみ解析だったが、
2018年には、EGFR、KRAS、ALK、MGT、FRBB2、BRAF、RET、ROS1…等遺伝子変異が判明している。


 今後の方向性
・2018年4月1日現在
がんゲノム医療中核拠点病院11、連携病院132。実施施設は急速に拡大していく。
・来年春頃に、がん遺伝子パネル(※)が保険で使われるようになると思う。

※遺伝子変異、増殖などを同時に解析できる診断薬。

第一人者である先生の話は、拝聴していて、とても心強く感じられた。

会場からの質疑応答。 

Q.   京都大学や横浜市大附属病院などが実施しているゲノムとの違いは何か。
A.   検査目的によって、調べる遺伝子数が違う。保険審査されている薬剤に対応する遺伝子。これに、臨床試験に入っている遺伝子。さらに予後の予測やがん種の診断に役立つ遺伝子まで行うとパネルは多くなる。

Q.   血液がんにゲノム医療をどのように応用させるか。
A.   現在は、固形がんが対象だが、今後日本血液学会とがん研究センターが協力し、オールジャパンの血液パネルを作ろうとしている。現在、デザイン中。

Q.   ゲノム医療はどんなレベルのがんに保険適用となるのか。
A.   現時点では、分からない。先進医療の対象は、標準治療が効かない固形がん、または原発不明がんで、尚且つ全身状態の良い人。
そのレベルから保険適用となるのでは。
個人的には、化学療法を受ける患者すべてが最初にパネル検査が受けられるといいと考える。

着実に医学は進歩している。
そう思える講演内容だった。

ちなみに、これらの講演は、後日にネット視聴予定。
詳細はこちらへ。


今日は送り火。
そろそろ残暑にも手加減してほしい昨今。
夏の疲れがでるのもこの頃なので、お互いに気をつけたいですね。




柴犬ポチ🐶