エリザベス女王の即位70周年を記念する、plutinum Jubilee が開かれた。

 

jubilee !

数年前に、調べた言葉だった。「Piccadilly」と一緒に。

 

どちらも、ロンドン生活ですぐに出くわす単語で、「どこかきらきらした響き」がある。しかも、「日常的に出くわす」のに、「意味がよくわからない言葉」だった。

 

jubilee は、ロンドンの地下鉄で知った。

jubilee line。少し傾いて南北を走り、南の端から東へ進む路線。

ロンドンのどまんなかともいえるCharring cross から北側へは, 老舗が立ち並ぶ Bond street, シャーロック・ホームズで有名な Baker street, 「アビー・ロード」の最寄り駅でボーイ・ジョージの住まいもあった st Jones wood など、伝統的で高級感のある駅が並ぶ。

 

jubilee は、「ジュビリィ」と日本語で発音しても華やかに聞こえる。

受験英語では耳にしたことがない単語であるうえに、沿線駅が持つ個性とあいまって、「特別な何か」に由来する地下鉄線名なのかな、と感じていた。

 

Piccadilly は、日本でもなじみのある単語。「ピカデリー」と書くと、ああ、松竹系の映画館の名前だ、とわかる。

 

イギリス風に発音すると、この単語もきらきらしていて、派手で、日本語の「ピカデリー」ほど簡単には発音できない。

英語発音をカタカナで書くと「ピカディリィ」。日本語とそう変わりはなさそうだ。

 

でも、イギリス人が言うときには、「ピ」と「ディ」のストレスを強くし、しかも、すべての音をくっきりと発音する。けっこう、言いづらい。ふたつの「ィ」のところで口を横に広げながら発音すると、わかる。文章のなかにこの単語を入れ込んで英語を話すと、なお難しい。

 

イギリス単語には、長いし、重々しいし、伝統的な印象を醸し出すものが多い。Piccadilly は、長さや伝統的な感じはあるけれど、「重々しい」というよりは「きらきらした感じ」に僕には思えた。

 

Piccadilly は、「道の名前」。

ロンドンに慣れるまでは、素直にそう受け入れていた。

でも、暮らしているうちに、本当に道の名前なの? という疑問がふくらむ。

Piccadilly のあとには、「通りを示す名詞」がつかないから…。

 

ロンドンの通りの名前は、僕が知るかぎりたいていは。 street や lane や road などの「通りの広さ・交通量」を示す単語か、corner や garden や close などの「環境を示す言葉」がつく。

 

でも、Piccadilly はそれひとつの単語だ。

Piccadilly circus なら、有名な広場名だし、同名の地下鉄駅もある。でもPiccadilly は何もつけないのに「通りの名」みたいに、誰もがつかっている。なぜだ?

 

滞在当時、僕は、勝手にある推論を出していた。

Piccadilly は、「特別な逸話」に彩られた「地域名(通り名ではなく)」なのだろう。

 

間違いだった。うしろに単語がなくても、Piccadilly は通りの名前だった。

なぜ特別扱いされているのか、までは、行きつかなかったけれど。

 

一方、 jubilee は、Platinum Jubiee が、祝祭感にあふれていたおかげで、ようやく言葉の本質にたどりつけた。

 

数年前に調べたときには、「ユダヤ教」とか「ヨベルの年」とか「レビ記」など、僕には馴染みのない言葉の羅列にやられてしまい、「特別な祝祭」らしいこと以外の言葉の要素を、つかめなかった。

 

今回は、plutinum jubilee のもつ意味と合わせて、jubilee は「特別な年まわりの祝祭」を意味するものと、理解できたように思う。

2000年にアフリカと欧米主導で行われた「最貧国への債務を帳消しにする運動」にも、jubilee という単語がつかわれたらしい。「(ミレニアムの)特別感のある年」から、jubilee を用いたのだろう。

 

テレビが、platinum jubilee という言葉とセットで、「10年前の diamond jubilee のときには」と説明していた。

あれ…? ひょっとして、「結婚の周年」と同じなのかな?

 

銀婚式は25周年、金婚式は50周年。

1周年は紙婚式、2周年は…、とたくさんの「記念婚名」があると聞いたことがある。60周年が、ダイヤモンド婚式、だったという記憶も、ある。

 

確かにその通りだった。

日本人が「結婚の記念周年名」として知っているものは、英語では、そのままほかの「祝祭感のある周年」にも置き換えられる。

 

そして、70周年が、plutinum jubilee。

70年って、すごい。

僕が生まれてからずっと、イギリスの国家元首は、エリザベス二世だ。

 

jubilee line もまた、彼女の在位25周年を記念して命名された路線名だという。

やっぱり、ね!

 

   *   *   *

 

最後に少しうらみごと。

この「周年」を表す単語、について調べているとき、資料によって「違い」があった。

 

「イギリス王室の plutinum jubilee」については、どの資料にも「王の在位70周年を記念する式典」などと、記されている。さすがに、「今」の話題だ。誤差はない。

 

でも、「プラチナ婚式」を調べると、「結婚「75」周年」を意味する、とする資料がわんさか出てきた。40パーセントほどが「75年」を採用していて、なかにはまことしやかな解説もある。

 

「金婚式からさらに四半世紀(25年)後の、75周年をプラチナ婚式と呼ぶ。最後の「婚式」を迎えられるようにという願いとともに」

 

「王になれる人は、結婚できる人よりはるかに数が少ないから、在位については「5年短く」、「70年」でいいじゃん」

そんな理屈を欧米人が好むとは思えない。

 

きっと結婚の周年も70年だろう、という前提で資料を読み込んでいくと、宝石など商売とからむ「信用のおける資料」はすべて「結婚70周年」に、「プラチナ」を紹介していた。

 

きっと、初期に誰かが間違って記した「75周年」を、ブログに載せたい人がそのまま孫引きして、間違いが拡散しちゃったんだろう。

実用書の全盛時にも同じようなことがあったなあ、と思い出した。