最近は使わなくなった言葉が、突然、頭に浮かんだ。

「えんがちょ」

 

子どもの頃、汚らしいことをした友だちにむかってしたり、されたり。

子どもの行動での「汚らしい」だから、笑ってすませられるようなこと。たとえば、犬のフンを踏んじゃったりすると、一緒にいる友だちに、「えんがちょ!」と言われる。

「えんがちょ」のあとに「(指)切った」とかなんとか続いたような気がするけれど、「指切りげんまん」と混同しているのかもしれない。

 

そういえば以前、「指切りげんまん」の意味も、調べたことがあった。

「げんまん」は「拳万」。

全部を漢字で書くと「指切り拳万」。なんだか物騒だ。

 

「えんがちょ」にはアクションがついていた。僕がつかっていたのは2種類。

 

オーソドックスなほうは、両手とも、親指と人差し指で輪をつくり、それをからだの前で、数字の「8」の字のようにつなげてから、腕ごと左右に引き離す。(小学校のクリスマス会のときに折り紙でつくった飾りつけのリボンの輪をつなげるときのように、合体させる)。

引き離す(切る)ときには、輪をつくっている親指と人差し指を少しだけ離すが、すぐに元に戻して、2つの輪にして、完了。このアクションがあるから、「(指)切った」という言葉が続くような気もするのだ。

 

もうひとつは、イギリスなどにある crossed fingers と同じ。中指を人差し指の上からからめるだけ。どちらの手でもよかったし、両手同時にやっていたようにも思う。

イギリスに滞在していたときに、このサインが、good luck を意味するものだと知って、へえ、と思った。

 

「えんがちょ」を検索してみる。

ああ、語源不明か…。ただ、「えん」は「縁」で「けがれ」をさし、「ちょ」は「(擬音の)チョン」が省略されたもの。つまり「けがれをちょん切る」という意味だとする研究もあるらしい。

 

全体として「えんがちょ」は、

「子どもが汚いものに触れたりしたときに、騒いで、汚れをほかの人にうつそうとする遊び」あるいは「そのときに用いる言葉」。

うん、確かにそうだ。

 

じゃあ、「えんがちょ」に続く言葉は?

 

在宅勤務になっている妻にたずねてみると

「鍵かけた、でしょ?」

という。

あ、そうかも。この言葉も検索上でヒットしている。

「(指)切った」は、少数派らしい。これも地域的に正しいのかもしれないけれど、たぶん僕の頭をよぎった「(指)切った」は、「指切りげんまん」との混同だ。

 

「千と千尋の神隠し」のセリフにも「えんがちょ」はつかわれている、とある。そうだったっけ…。なんだかちょっとうれしい。同時代性を感じるせいかな。

 

「けがれをちょん切って、鍵をかける」か。

そういえば、僕が子どもの頃は、トイレのことを「ごふじょう」とも呼んでいた。

「ご不浄」。きよらかではないもの。

日本人は、けがれているか、きよらかかを、子どもでもつねに意識しているのかも。

 

子どもがうんちを好きなのは、自分の分身だと思っているから、と「チコちゃん」で見たことがあるけれど、子ども時代は、うんちにかぎらず「汚らしいもの」を、よく遊びのネタにしていたなあと思う。

くしゃみをして、鼻水が出て、鼻の下にべったりとついちゃったときにも、「えんがちょ」と言われて、友人を追いかけた覚えがある。