この2ヶ月、私が勤務している福祉施設では、やたらともらい物が多いのです。

 もらい物を持ってくるのは、好意にしている農家や自分の畑で何かをつくっている「近所のおばさん」達。
 もってきていただける物は、「カキ菜」「ほうれん草」「あぶら菜」がほとんどで、物は、ちゃんとパッケージしてあるものから、土が付いた状態のまま段ボール箱いっぱいに詰め込まれたものまで様々であるのですが、不思議と、もらう物はほとんど同じなのです。
 もう、施設にある冷蔵庫はそれらの野菜でパンク状態にあります。

 ここまで読んで、敏感な人は、お気づきになるでしょう。

 要は、「東日本大震災」のために事故を起こした「福島第一原発のメルトダウン及び水素爆発等」で降り注いだ「放射性物質」を浴びてしまったために、「放射線」が基準値を大幅に超える高い数値で検出され、出荷停止になった「売り物にならない野菜」ばかりなのです。

 かといって、こちらから「放射能、大丈夫ですよね」などと、面と向かって言えません。言ってしまったら、逆に私達の施設があらぬ噂をたてられてしまいます。そうでなくとも、認知症老人にたいする理解は低く、苦情に振り回される事も日常的なのですから・・・。

 もちろん、調理する前に、流水で土や汚れを落とし、大鍋で茹でて、さらに流水で洗いますが、当然、「放射性物質」及び「放射能」すべてがそれで落ちる訳ではありません。
 でも、それが確実に放射性物質を浴びた根拠がある訳ではありませんから、利用者さんであるお年寄りの食卓に、調理されて並ぶ訳です。

 確かに「風評被害」も認めますが、放射性物質を浴びた危険性があるために売り物にならない物を、お年寄りなら食べさせても良いなんて、良心どころか、倫理以前の問題です。

 野菜を持ってきた、おばちゃんの一言「10年、20年たってから影響が出るんだろうから、年寄りには関係ねぇべ・・・」。

 確信犯とは、こうも良心的で残酷なものなのです。