”ブルックナーのクライマックスは広がりを持つ”、正確な言い回しは覚えていませんが吉田秀和さんのこのような言葉を読んだ時、言い得て妙だと腑に落ちました。

 

ブルックナーの交響曲は確かにどこまでも高く広がっていくように感じますし、それが魅力です。そしてそんな”広がり”が最も感じられるのが「第5番」じゃ無いでしょうか。

 

ブルックナーの交響曲は「第3番」以降のものを沢山聴いてきました。一時は「第8番」こそ最高と思ったり、今回紹介する「第5番」がその位置を奪ったこともあります。

 

ブルックナーやマーラーの交響曲が、それまでのベートーヴェンやブラームの位置を奪って演奏家や聞き手の人気を集めたのは随分前のことですが、今でもそうなのでしょうか。

 

ブルックナーもマーラーも”長い”ことで知られています。マーラーの「第3番」なんて長らく”最も長い交響曲”としてギネス認定されていたほどですから。

 

マーラーは時に”長過ぎるなあ”と感じることがありますが、ブルックナーでは全くそういう事がありませんし、その長さが必要だと感じられます。

 

中野雄さんという方が書かれたものにクラシック音楽界にまつわる色々な面白い話が載っていますが、ウィーン・フィルの古参連中との付き合いなど実際に現場との関わりを持たれているだけあって一つ一つの話が面白い。

 

その一つにアムステルダム・コンセルトヘボウの何人かを自宅に招いて、ヨッフムの「第5番」を聴かせた話があります。

 

中野さんはオーディオメーカーの役員だった人でもあります。

 

演奏が始まると彼らは”コントラバスが揃ってない”とか口々に批評を始めますが、しかし演奏が終った時は一斉に立ち上がって拍手を送ったそうです。そして”ヨッフムはいつもこうなんだ。最初は何とも面白くない演奏なんだが、演奏が進むにつれどんどん素晴らしくなっていく”と口にした。

 

このCDは1964年のライブ音源が収録されています。

 

フィナーレの盛り上がりをお聴き下さい。

 

やっぱり音楽は生が一番、それが叶わなければライブ録音がいいですね。