”部屋を暗くして音楽を聴く”

 

実は今そうやって聴いているのですが、別に悩みがあるとかじゃなく、単にスピーカーを視野から消してみたらどうだろうと思い付いたからです。

 

目の前のパソコンの画面だけは明るいのですが、その向こうの真っ暗な闇の中でクレーメルの弾くバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番」が聴こえてくるのは不思議な感じですが、思った通りクレーメルの演奏に集中できます。

 

 

これはクレーメル初の「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」の全曲集で、何度も聴いているはずなのですが、今日はちょっと印象が違って聴こえます。

 

今日は「パルティータ」の方を3曲聴いていますが、とても”攻撃的”なのです。

 

この「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」は全てのヴァイオリンのための音楽の中でも1、2を争う名作ですが、”シャコンヌ”を含む「パルティータ第2番」はかなあり早い時期から聴いていましたが、ソナタを含めた全曲はこのクレーメルで初めて聴きました。

 

バッハの音楽が素晴らしかったこともあって、とても気に入りました。

 

その後、神品とも言えるシェリングのものを聴くに及んで、クレーメルの方はさっぱりご無沙汰でしたので、久しぶりに聴いた訳です。

 

”パルティータ”とは組曲のことで、バッハのこの曲集では主に色々な舞曲を組み合わせて書かれていますが、クレーメルのヴァイオリンは正に踊っているかのように聴こえます。

 

さて、「パルティータ第2番」の最後に置かれた”シャコンヌ”は、バッハが”一丁のヴァイオリンで宇宙を描いた”とまで言われるスケールの大きな名品で、この「ソナタとパルティータ」全曲の要として配置されています。

 

バッハに挑むヴァイオリニストにとってもここ一番の見せ場、クレーメルも快刀乱麻の如く立ち向かいます。その息遣いまでが聴こえてきそうな緊迫感は鬼気迫るものがあります。

 

(シャコンヌ)

 

正直、ちょっと疲れました。

 

この曲にはこういう演奏も受け入れるだけの大きさがあるということでしょうが、バッハが聴いたらびっくりして”私の曲がこんな風に演奏できるのを初めて知った”とでも言いそうです。

 

続く「第3番」も当然ながら同じスタイルで弾かれます。こういう演奏が好きな人も大勢いらっしゃるとは思いますが、私はやっぱりシェリングの方が安心して聴けます。