ふと、”今までで一番聴いた曲って何だろう?”と思いました。
父親がクラシック好きでよく部屋で聴いていました。何かの機会にレコードの聴き方を教えてもらい、父親の仕事中に自分でもレコードを聴くようになったのは小学生高学年の頃でした。小学館かどこかから出ていた「ベートーヴェン全集」みたいな赤いボックスがうっすらと記憶に残っています。
記憶としてはっきり残っている最初のレコードが、カラヤン/ウィーン・フィルのチャイコフスキーの「三大バレエ」が入ったレコード。
タイトルの”ボンボンズ”は、もちろん”ウィスキーボンボン”の”ボンボン”でしょう。チャイコフスキーの「3大バレエ」と言っても組曲からの抜粋、他に「ペール・ギュント」、「こうもり序曲」が入っています。
当時はもちろんカラヤンの何たるか、ウィーン・フィルの何たるかを知ることもなく、ただただ音楽を楽しんでいました。社会人になってから一時期は、毎朝出勤前に「こうもり序曲」を聴いて気分を盛り上げたのも懐かしい思い出です。
さて、最初の”今までに一番聴いた曲”ですが、恐らくチャイコフスキーの「バレエ組曲」だと思います。
ところでロシア(ソビエト)のクラシック音楽は、チャイコフスキーから始まったような感じがしますが、歴史的にもそう間違ってはいないようです。
旧ソビエトにも教会音楽は入ってきていますが、国策として教会音楽は禁止されたためヨーロッパ音楽が入ってきた19世紀になってクラシック音楽が発展したという経緯があるようで、その時期はチャイコフスキーが活躍した時期と重なります。
とにかくそんな経緯があってチャイコフスキーの「三大バレエ」は最も身近な音楽として、いつもそばに居たんだと思います。
今回はちゃんとした組曲版のCDを聴いてみたいと思います。そしてこの曲はカラヤン/ウィーン・フィルに限ります。もちろんカラヤンがベルリン・フィルと再録しているのも知っていますが、デッカ録音のウィーン・フィルとの録音は永遠不滅です。
🔶バレエ組曲「白鳥の湖」
この録音は「Karajjan Bon Bons」と同じ、というかこちらがオリジナル。最初の「情景」の音楽がバーンと響くと一気に音楽に引き込まれてしまいます。
ここで聴けるウィーン・フィルは輝かしくもありながら、どことなく鄙びた味わいがあって、カラヤンのシンフォニックな扱いは後のベルリン・フィルと変わらないものの、より音楽が自然に流れていくように感じます。
組曲は素晴らしい曲ばかりなので、全曲版にはこんな音楽で溢ているのではと聴いてみたことがありますが、結論から言えば組曲版で十分だと思った次第です。
終曲を聴いてみましょう。
🔶バレエ組曲「くるみ割人形」
チャイコフスキーは「白鳥の湖」では物語から感じられる情景を描いた抽象的な音楽だったように思えますが、この「くるみ割人形」ではより具体的になっています。
組曲版に並ぶ曲のタイトルだけ見てもそれが感じられます。組曲版は、
小さい序曲
行進曲
こんぺい糖の踊り
トレパーク
アラビアの踊り
中国の踊り
あし笛の踊り
花のワルツ
ちなみに作曲順は、「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割人形」ということですので、この曲はチャイコフスキーのバレエ音楽の集大成とも言えそうです。
「花のワルツ」何とも幸せな気持ちにさせてくれます。
🔶バレエ組曲「眠れる森の美女」
この曲というか「眠れる森の美女」には格別の思い出があります。
子供たちがまだ小さかった頃、大昔のことです、当時はレーザーディスクというものがあって、LPレコードに似たディスクに映画などが収録されていました。
その中の一枚にディズニーがアニメ化した「眠れる森の美女」があって、子供たちも気に入って繰り返し観たものです。音楽はチャイコフスキーのもの。
色々あって一人の魔女が生まれたばかりのオーロラ姫が”15歳になった時、紡ぎ車の錘が指に刺さって死ぬ”と予言します。その時の魔女が発した言葉は詳しくは覚えていませんが、とにかく恐ろしい響きで、しばらくの間は子供達が言うことを聞かない時は、その言葉を聞かせると大人しくなったものです。
内容が内容だけにチャイコフスキーの音楽も暗い雰囲気を帯びたものが多く、「3大バレエ」の中でも特異な存在ですが、聴きごたえだけで言えばこの曲が一番かも知れません。
子供達が怖がったシーンに流れていたのが、多分この「パ・ド・カクテール」じゃ無かったかと思います。
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”三つ子の魂”とはよく言ったもので、この録音は私の根本に深く根付いているんだなあと、今更ながらに思います。
カラヤンだけとってもその後何度か再録されていますし、他の指揮者のものを入れたらどれだけのものがあるか分かりませんが、私もそのいくつかを聴いています。それでもこの録音への思い入れは不変です。