今回は、ポリーニが弾いたシューベルトの「さすらい人幻想曲」「ピアノ・ソナタ第16番」を納めたレコードです。

 

 

ショパンの「練習曲」で一気にトップ・ピアニストの仲間入りを果たしたポリーニの弾くシューベルト。

 

🔷「ピアノ・ソナタ第16番」

 

この曲はレコードのB面に入っていますが、先に聴きます。

 

この曲のことは、ドラマ「のだめカンタービレ」で知ったのですが、このドラマで扱われる音楽は色々ありますが、原作者の二ノ宮和子さんの趣味の良さがうかがわれました、主人公野田恵(のだめ)がマラドーナ・コンクールのピアノ部門に挑戦し、そこで弾いたのが、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」、ドビュッシーの「喜びの島」、そしてこのシューベルトの「ピアノ・ソナタ第16番」でした。

 

そしてこのシューベルトはこのドラマで教えてもらったものですが、他にもモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」もこのドラマを通して知りました。

 

練習中に”のだめ”が「シューベルトが何を言っているのか分からない」と言い、憧れの先輩千秋が「自分のことばかりではなく、シューベルトの言っていることも聞いてごらん」と返すシーンがあって印象的でした。

 

というのも、その後何度となくこの曲を聴くようになったのですが、その度に”のだめ”と同じ感想を持ったので。

 

神品とも思える第1楽章に対して、残りの3つの楽章の物足りなさ。いくらピアノが強打されても私には物足りない。

 

シューベルトは31歳の若さで亡くなってしまった訳ですが、作品番号から見ると950曲以上は書いていて、楽曲一覧を見ると一番古い年号として1811という数字が見られますので、わずか17年足らずでこの曲数を書いたことになります。

 

単純計算で一年に55〜6曲、毎月4〜5曲書くという量産ペース。もちろんちょっとした歌曲などが主なので、単純には比べられませんがベートーヴェンがその生涯で120曲程度しか書けなかったのと比べても、一曲一曲にかけた重みは違うはずです。

 

ベートーヴェンの重みに対し、私はどうしてもシューベルトに軽みを感じてしまうのです。そんなシューベルトだから「交響曲第8番”未完成”」や「交響曲第9番”グレート”」が奇跡のように輝きます。

 

この曲もベートーヴェンだったらもっと推敲を重ねただろうに、という思いが捨て切れません。それがシューベルトなんだといわれて仕舞えば、何とも答えようが無いのですが。

 

ポリーニは想像通り、どんなに強く打鍵しても音が濁らず、どんなに速いパッセージでも一つ一つの音の粒立ちが失われない見事な弾きっぷりです。

 

🔷「さすらい人幻想曲」

 

繰り返しになりますが、こちらがA面。つまりメインの曲です。

 

「ピアノ・ソナタ第16番」と同じく、シューベルトの才能を感じさせる印象的な出だし。

 

シューベルトは素晴らしい歌謡的主題が書けた時にその才能が発揮される人だと思うのですが、この曲は歌曲を元にしていて主題作りに苦労しなかったこと、実質的にはピアノソナタながら4つの楽章を切れ目なく幻想曲として書いたことが、成功の要因だったと思います。

 

素晴らしい曲です。

 

しかし、このレコードで最も印象的だったのは、やはり「ピアノ・ソナタ第16番」の第1楽章でした。