今回は、ワイセンベルクの弾くベートーヴェンの3大ピアノソナタのレコード。
アレクシス・ワイセンベルクは一時期カラヤン御用達のピアニストとしての印象が強かったですが、いつの間にか名前を聞かなくなっていました。2012年に亡くなっています。
そのワイセンベルクの「悲愴」「月光」「熱情」のレコード。
🔶「ピアノ・ソナタ第14番”月光”」
あの波に揺れるボートを表した三連符をこんなにもゆっくりたおやかに弾いた例を他に知りません。
今はもうこの曲に対する興味は無くなってしまっています。ベートーヴェンのピアノソナタなら他にもっと素晴らしい曲がありますから。
でもこんな「月光」なら悪くない。
アダージョ、アレグレット、プレストと楽章を追ってテンポが速まりますが、ワイセンベルクはフォルテッシモでさえ決して衝撃を与えないよう注意深く弾かれます。
長くカラヤンの薫陶を受けたワイセンベルクならではの演奏なのかも知れません。
🔶「ピアノ・ソナタ第8番”悲愴”」
「月光ソナタ」と違って「悲愴ソナタ」に対する関心は初めて聴いた時から変わりません。
ここでワイセンベルクは人が変わったかのように思いっ切り曲に入り込みます。私にはちょっとロマンティック過ぎます。
例えは変ですが、ドラマ「のだめカンタービレ」で”のだめ”が弾いた「悲愴」はワイセンベルクをイメージしていたのかも知れません。
昔、五味康祐さん(大のカラヤン嫌い)が、カラヤンの演奏を”大見栄を切る”といった風にその著書で批判していましたが、ここでのワイセンベルクは正にそんな感じを受けます。
ちなみに私はカラヤンをそうとは思っていないので、五味さんの偏見だろうくらいに読んでましたが。
「月光ソナタ」のたおやかな弾きぶりに感心したワイセンベルクでしたが、「悲愴ソナタ」はちょっとやり過ぎでした。
🔶「ピアノ・ソナタ第23番”熱情”」
第1楽章を聴いている間はとても良い演奏に感じました。ワイセンベルクはとても素直に演奏しているように感じます。
しかし第2楽章に入ってからの思わせぶりな、感情移入の激しい演奏にはついていけませんでした。五味康祐さんの言う演出過剰です。
第3楽章は良かったと思うので残念でした。
せめて演奏が気に入った「月光ソナタ」だけでも載せておこうと思ったのですが、動画が見つからず諦めました。