今回は、マーラーの「交響曲第8番”千人の歌”」のレコードです。
ショルティの最初のマーラー「交響曲全集」の中の一枚。
🔶ショルティ、最初の「マーラー交響曲全集」
1970年代始め、ショルティ/シカゴ交響楽団のコンビがマーラーの「交響曲第5番」でレコードデビューを果たし、マーラーブームが一気に開花しました。あのカラヤンでさえマーラーのレコードを出すことになります。
ショルティは以前からマーラーを録音していて、録音の無い曲がシカゴ響とのもので埋まると、レコード会社はその過去の録音と一緒に「全集」としてアルバムを発売しています。
私は当時勤めていた音響メーカーの社販のカタログにこの「全集」があるのを見つけ、社員価格で買いました。
シカゴ響とのものは「第5番」「第6番」「第7番」「第8番」」「大地の歌」、「第1番」「第2番」「第3番」「第9番」はロンドン交響楽団、「第4番」はアムステルダム・コンセルトヘボウとの録音で、これが一番古く1961年のもの。
流石にこれらを一気に紹介できないので、何回かに分けて紹介していこうと思います。
🔶「交響曲第8番”千人の交響曲”」
最初にこの曲を取り上げたのは、この全集の中で音質面で最も優れているからです。
”優れている”と言ってもオーディオ的にではなく、その音質です。ショルティはこの曲でウィーンの合唱団を使いたかったためでしょう、シカゴ響をウィーンに連れて行ってウィーンのソフィエンザールで録音しています。
ショルティのの指揮するシカゴ響はどこか覚めた響きがしますが、ウィーンで録音された「第8番」ではオーケストラの音色に温かみが加わって、更に素晴らしい音になっています。これはソフィエンザールの持つ残響特性のおかげです。
早速聴いていきます。
その名の通り、8名の独唱、2組の混声合唱、少年合唱、オーケストラが要求され、初演は171名の管弦楽団、850名の合唱団、それに8名の独唱を加え総勢千名を超える大編成で行われたことが”千人の交響曲”の由来になっています。
マーラーは”もはや人の声ではなく、大宇宙が鳴り響く”と言ったことが、850名の大合唱団とリンクしています。
曲は第1部、第2部から成り、第1部は前段、マーラーが”大宇宙が鳴り響く”と言ったのは第2部を指してのことだと思いますが、私はどちらかというと第1部の凝縮した音楽の方が好きです。
特にソプラノが”Gloria Patri Domino"と歌い始める最後の部分は何度聴いても鳥肌ものです。
私はここを”マリア、マリア”と歌っているとずっと思ってましたが、こうやって改めて歌詞を見たら全く違ってました。
とにかくここは凄い、凄過ぎます。ショルティ!
最後の部分で、オーケストラ、合唱が何本もの竜巻が地面から立ち上るかのような短い上昇を聴かせますが、ここは何かが天に昇っていくことを表しているようです。
第2部の前半はアダージョ。ここは冗長で物足りないと思ってましたが、ショルティ/シカゴで聴くとそれは間違いだったと気が付きます。マーラーはとても雄弁な音楽を書いています。
そしてフィナーレ、マーラーが”大宇宙が鳴り響く”言った箇所、音楽は最高潮に達します。
ショルティの実力が現れた一枚だと思います。