今回はハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウの魅惑的な「未完成」のレコードです。

 

 

🔶フィリップスの録音の素晴らしさ

 

レコードは演奏を録音したものですが、その録音の仕方はレーベルごとにノウハウが違うようで楽器の響かせ方や全体の鳴り方に微妙な違いが出ます。同じカラヤン/ベルリン・フィルでもEMIとグラモフォンでは明らかに違って聴こえます。EMIは豪華絢爛、グラモフォンは重厚でどっしりといった風です。

 

そんな色々なレーベルがある中で私が最も好きなのはオランダ・フィリップスのホール感たっぷりの豊潤な響きです。ただ有名な指揮者やオーケストラとは契約できていないので少々寂しいのですが、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏が聴けるのが強みです。

 

🔶ハイティンク「未完成」

 

ハイティンクは20代でアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団のヨッフムとの2人体制ながら首席指揮者となった逸材なのですが、そのケレン味の無い演奏は良くて中庸という評価でした。

 

私がハイティンクに注目したのはずっと後のことで、ウィーン・フィルと録音したブルックナーの「交響曲第3番」の素晴らしさを知ってからです。

 

そこでハイティンクは何か特別のことをしている訳ではありませんが、多くの指揮者が第3稿で演奏する中、ハイティンクは第2稿を選びました。ブルックナーの「3番」は第2稿で演奏して初めてその魅力が伝わるんだと確信しました。

 

そしてオーケストラはウィーン・フィル。録音はフィリップス。これ以上何を望めばいいのかという感じです。

 

音楽を長く聴いていく内にその都度聴き方というか注目点が変化してきました。昔はそれこそフルトヴェングラーのテンポを歪めてまで思いのたけを聴かせる演奏にゾッコンだったこともあります。しかし年齢を重ねたせいもあるのか、今はそんな演奏はもう違うと感じます。

 

良い音楽を素晴らしい音で聴かせてくれる、それ以上何かあるというのでしょうか。

 

ハイティンクの「未完成」はそんな演奏です。

 

youtubeで探してみましたがこの音源をアップされている方はいらっしゃいませんでした。

 

🔶シューベルト「交響曲第5番」

 

このレコードのB面には同じシューベルトの「交響曲第5番」が収録されています。

 

シューベルトは8つの交響曲を残しましたが、最初の6曲とその後の2曲「未完成」と「グレート」とは明らかに違いがあります。

 

この「交響曲第5番」はその前のグループに属しますが、ハイドンやモーツァルトの影響下にあるような音楽です。

 

シューベルトの交響曲を聴くなら「未完成」か「グレート」を聴くべきでしょう。

 

だからと言ってもちろんつまらない曲ということは無く、ちゃんと聴きごたえのある音楽に仕上げているのはシューベルトの才能でしょう。

 

音楽としての主張が弱い分、オーケストラの美音に浸っていられるとも言えなくもありません。