今回取り上げるのはカラヤン/ウィーン・フィルの「ツァラトゥストラはかく語りき」のレコード。

 

 

🔶カラヤン来日記念盤

 

カラヤンとベルリン・フィルの来日に合わせて、古いウィーン・フィルとの録音が何枚か廉価で出された、ジャケットに¥1000とあります、中の一枚。

 

このシリーズで目ぼしいと思ったものは何枚か買いましたが、「惑星」を買っておかなかったのは今も残念に思ってます。

 

🔶映画「2001年宇宙の旅」で使われた録音

 

SF映画の金字塔と言われるスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」の冒頭で、このカラヤン/ウィーン・フィルの録音が使われています。

 

しかしどいう訳か映画のエンドロールでは誰の演奏かというクレジットがありません。同じように映画の中で流れる「美しく青きドナウ」は、それがカラヤン/ベルリン・フィルの演奏である事がちゃんとクレジットされているので余計に不思議に思われます。

 

これはデッカとグラモフォンというレーベルの違いから来たもので、ポピュラー、ロックからクラシックまで幅広く扱うデッカにとって、いくら有名なカラヤンとはいえ売り上げから見ればクラシックの音源など重役にはどうでも良かったのでしょう。映画に使う事は承諾したもののクレジットは要求しませんでした。

一方グラモフォンはクラシック専門のレーベルで、カラヤン/ベルリン・フィルはドル箱です。当然のようにクレジットを要求しています。

 

”売上から見れば”と書きましたが、いつだったかの時点でデッカ、グラモフォンに限らずクラシックのレコード全体の売り上げ額は、ビートルズのレコードの売り上げ額と同じだったというデータがあります。

 

🔶カラヤンのリヒャルト・シュトラウス

 

父親が音楽好きで家にステレオやレコードがあったことで子供の頃から自然とクラシックを聴くようになったので、レコード芸術という専門誌も早くから読むようになっています。しかし今考えれば当時そこにレコード評を買いている音楽評論家の重鎮はフルトヴェングラー世代の人たちで、基本的にアンチ・カラヤンで占められていました。

しかしそんなアンチでも認めたのがオペラとリヒャルト・シュトラウス。まあアンチにとって聖域だったベートーヴェンやブラームス、あるいはブルックナーさえ冒さなければ良かったんだと思います。

 

🔶カラヤンとウィーン・フィル

 

ベルリン・フィルはフルトヴェングラー時代、すでにトップクラスのオーケストラでしたが、カラヤンはオーケストラを名実共に世界一と言われるまでに育て上げました。もう一つの雄であるウィーン・フィルはウィーン国立歌劇場管弦楽団の中から選ばれたメンバーによるオーケストラである事がその性格を決定付けています。

彼らの給料は国立歌劇場から出ます。それはウィーン・フィルとしては無給であるということで、代わりにコンサートやレコードで収入を得ています。常任指揮者をおかず演奏会の指揮者は自分たちで選びます。指揮者岩城宏之がウィーン・フィルを初めて振ったとき、そのギャラの安さに驚いていると、

 

「このギャラはカラヤンだって同じなんだよ。しかし一度でも私たちのオーケストラの指揮台に立てば、次から他のオーケストラのギャラは倍増するはずだ」と団員に言われ、更に

 

「一度でも私たちのオーケストラを振ったら、もう二度と2流のオーケストラは振れないよ」と半分脅しのように言われたそうです。

 

またウィーンではウィーン・フィルの団員であることは特権で、銀行では無担保でお金を貸してくれたそうです。実際無理な借金をして返済不能になるようなこともあったそうですが、オーケストラがメンツを保つため代わりに返済したりしていますので、今はどうなのか分かりません。

 

またウィーン・フィルの団員が使用する楽器は全てウィーン・フィルが所有する楽器で、都度貸し出しています。そのことと団員はウィーンで技術を学んだ人に限っていることでその固有の響きが保たれています。

 

つまりウィーン・フィルは自尊心の塊のような連中の集まりなのです。だから指揮者にとっては怖い相手なのですが、カラヤンは何とも言え無い美音を彼らから引き出します。私はその美音に浸りたいためこのレコードを聴いています。

 

長々と書いている内に演奏は終わってしまいました。もう一度聴いてみることにします。