前回、カール・ベームのことを書きました。
今回の”私の視聴室”では、カラヤンのことを書きたいと思います。
というのも、youtubeで1985年にアモイヤルのヴァイオリンでベルリン・フィルを指揮したベルクの「ヴァイオリン協奏曲」の放送録音を聴いて、驚いて、その感想を書きたくなったからです。
🔶ベルク「ヴァイオリン協奏曲」
1935年4月22日、アルマ・マーラーの娘マノンが病死。以前からクラスナーというヴァイオリニストから曲の依頼を受けていたこともあって、作曲中であった歌劇「ルル」の筆を止め、急遽書き上げます。
この曲がベルクが完成できた最後の作品となってしまいますが、スコアには”ある天使の思い出に”と書かれていました。
この曲は12音技法に基づいて書かれていて、次のような音列を基本としています。
12音技法は無調音楽の一つの技法なのですが、ベルクはこの12の配列の並びの中に巧みに調性感を持たせています。
最初の3つはト短調の主和音、次の3つがニ長調、といった具合ですが、更に最後の4音はコラール「もう十分です」の冒頭に一致するという工夫を見せています。
🔶カラヤンの演奏
それでもこの曲は私にとってずーっと難曲でした。
名曲だと言われていますし、多くのヴァイオリニストも素晴らしい曲だと讃えていますので、私の何度となく色々な演奏を聴いてきました。
しかし、さっぱりです。曲の理解へのとっかかりになる所さえ見つからない状態でした。
そこに、このカラヤンとベルリン・フィルです。
オーケストラが奏でるめまぐるしいまでの音色の変化。アモイヤルのヴァイオリンそっちのけでオーケストラの響きだけが耳に入ってきます。
この動画はNHKの番組をエアチェックしたものらしく、演奏前に司会者が”アモイヤル、得意中の得意のベルクです”と語っているとおり、アモイヤルの瑞々しいヴァイオリンは素晴らしいのですが、それ以上にオーケストラが素晴らしかったということです。
さすがに、これでこの曲が分かったという所までは来ていませんが、随分近くまで寄ることができたと感じています。
ここまで来れば、今まで長い間音楽を聴いてきた経験上、もう手の内に入れたようなものです。
表題に”カラヤンの不思議”と書きましたが、これが世に言う”カラヤン・マジック”なのかも知れません。
私が聴いた録音を貼り付けておきます。