”私の視聴室”、今回は手持ちのレコード、CDでハイドンの交響曲を色々聴いていこうと思います。

 

曲数が多くなるのでCD中心で聴いていき、CDに無い曲があったらレコードでという形を取りました。このところレコードばかり聴いているので針先温存のつもりですがCDの手軽さとすっきりとした音の良さもいいものですね。

 

番号の若い順に聴いていって、一言二言感想を書いていこうと思います。

 

今回はその”前半戦”ということで、「ハイドン・セット」の前までを聴いて行きます。

 

🔷交響曲第31番「ホルン信号」 ズヴェーデン/オランダ放送室内管弦楽団

 

 

ハイドンが30代に書かれています。題名通りのホルンだけでなく、フルートや独奏ヴァイオリン、独創チェロが活躍します。こういう曲を聴くと”ハイドンは「ロンドン・セット」だけ聴いているだけでは計り知れないものがあるんだと、わかります。第四楽章が変奏曲形式になっているのがハイドンにしては珍しいのでは?

 

🔷交響曲第44番”悲しみ” バレンボイム/イギリス室内管弦楽団

 

 

この曲と次の「第45番」はCDが無く、レコードです。

 

この曲はいわゆるハイドンの”シュトゥルム・ウント・ドラング期”の音楽として知られます。”シュトゥルム・ウント・ドラング”は古典主義に異を唱え”理性より感情を優先する”という考えで、モーツァルトの「交響曲第25番」もこの流れを汲むものだそうです。

 

”悲しみ”というのは後日付けられた呼び名で、第二楽章に由来するとのこと。この曲の主調がホ短調という交響曲には珍しいもので、短調の持つ悲劇性が”シュトゥルム・ウント・ドラング”らしさなのでしょう。

 

🔷交響曲第49番”ラ・パッシオーネ” バレンボイム/イギリス室内管弦楽団

 

 

この曲もハイドンの”シュトゥルム・ウント・ドラング”期のものらしくヘ短調という調性で書かれています。副題の”ラ・パッシオーネ”は”情熱”とか”受難”とか訳されます。

 

ハイドンの多くの交響曲には副題が付けられていますが、本人の預かり知らぬこと。”受難”からイメージされるキリスト響的なものはあまり感じられません。

 

🔷交響曲第72番 ズヴェーデン/オランダ放送室内管弦楽団

 

 

「交響曲第31番」と同じくエステルハージの楽団のホルン奏者の技巧を誇示するために書かれていて、交響曲の番号的には後の作品と思えますが、実際は「交響曲第31番」より先に書かれたそうです。曲想が似通っているのも納得です。

 

🔷交響曲愛73番「狩」 ズヴェーデン/オランダ放送室内管弦楽団

 

 

「狩」という呼び名は、ハイドンが第四楽章にその言葉を書き付けたことが由来です。また第四楽章の旋律は「狩人提要」という出版物に載っているものを使ったようです。

 

後のハイドンでお馴染みのゆっくりした序奏から軽快なアレグロに移る音楽が聴けます。

 

🔷交響曲第82番「熊」 ザンデルリンク/ベルリン交響楽団

 

 

この曲から「第87番」までの6曲は”パリ交響曲”と呼ばれます。

 

「熊」の呼び名は第四楽章から来ているようですが、第一楽章からテンポよく流れていく始まりから全曲に渡ってハイドンらしさ満載です。

 

オーケストラが今までの室内管弦楽団からベルリン交響楽団になって響きも厚みを増してきました。

 

🔷交響曲第83番「牝鳥」 カラヤン/ベルリン・フィル

 

 

サンデルリンクのものは「パリ交響曲」を全曲聴けるので、この曲もそれでも良かったのですが、ここでカラヤンにも登場してもらいたいと、このレコードを選びました。

 

カラヤンはハイドンでもいつものようにデュナーミクの幅を大きく取り、まるロマン派の音楽のように響かせます。カラヤンはこのやり方で「天地創造」では素晴らしい名演を聴かせてくれていますが、この曲ではちょっとやりすぎと思えなくもありません。

 

ハイドンを聴くというより、カラヤンの至芸を楽しむレコードでしょう。

 

🔷交響曲第84番 ザンデルリンク/ベルリン交響楽団

 

 

ザンデルリンクに戻ります。

 

どこか格調高さを感じさせる第一楽章の出だしがハッとさせますが、そろそろハイドンの音楽も型にはまり始めているのかも知れません。

 

🔷交響曲第85番「王妃」  ザンデルリンク/ベルリン交響楽団

 

 

一説によると、フランス王妃マリー・アントワネットが、本作を含む一連の「パリ交響曲」の作曲をハイドンに依頼したオーケストラ団体「コンセール・ド・オランピック」を気に入っていたこと、そして「パリ交響曲」の中でも特に本作を気に入っていたと言われていることから「王妃」という愛称が付けられたとのこと。

 

確かに音楽に気品と気高さのようなものが感じられなくもありません。

 

🔷交響曲第86番  ザンデルリンク/ベルリン交響楽団

 

 

作曲順では次の「第87番」より後ですが、「パリ交響曲」の中では5番目に置かれます。

 

ハイドンが交響曲という形式に真正面から取り組んだと思わされる曲。祝祭的で壮大な趣があります。後の交響曲のような人気曲になれなかったのは、この曲に愛称が無いことからわかるようにチャームポイントとなるものが無かったからでしょう。

 

「パリ交響曲」を代表する曲と言っていいでしょう。ザンデルリンクの指揮にも心なし力がこもっているように感じます。

 

🔷交響曲第87番  ザンデルリンク/ベルリン交響楽団

 

 

「パリ交響曲」を締めくくる位置に置かれますが、実際の作曲順では3番目とのことです。

 

最後に置かれるだけあって充実した曲ですが、「第86番」にあった祝祭的な気分では一歩及ばずという感じです。

 

🔷交響曲第88番「V字」  ベーム/ウィーン・フィル

 

 

この曲は「ハイドン・セット」以外では一番人気があるのではないでしょうか。どこか典雅な味わいを感じさせます。レコードカタログにはクナッパーツブッシュ、フルトヴェングラーらの名前も出てきます。

 

クナッパーツブッシュの演奏はもうそれは個性丸出しの超絶面白いものでしたが、あれはクナッパーツブッシュを聴くためのもの。今回はベームとウィーン・フィルのレコードで聴いて行きます。

 

音楽が始まって、”あっ、ウィーン・フィルの音だ!”と感じます。それだけでもう十分なくらい。ベームの奇を衒わない自然な音楽運びも好感が持てます。

 

🔷交響曲第89番  ベーム/ウィーン・フィル

 

 

「第88番」とのカップリング。

 

「第88番」の人気の前にはその存在が霞んでしまっていますが、それも納得。今一つ個性が弱いです。

 

🔷交響曲第90番  ベーム/ウィーン・フィル

 

 

この曲から「第92番」まではドーニ伯爵からの依頼を受けて書かれた3曲セットで、「ドーニ交響曲」と呼ばれることもあります。

 

この曲はこれまでの曲たちとはちょと違う、明るさが加わったように感じます。当時のハイドンの様子は知りませんが、順風満帆だったのではないでしょうか。

 

第四楽章では偽終止も挟まれ、後の「驚愕」のようなユーモアも見せますが、音楽の充実度は確実にアップしています。ベームとウィーン・フィルの素晴らしさは言うに及びません。

 

🔷交響曲第91番  ベーム/ウィーン・フィル

 

 

「ドーニ交響曲」の2番目。3曲セットの中で緩徐楽章的にあたるように感じるのは、ハイドンの意図でしょう。この曲でもハイドンの充実ぶりが聴いてとれます。

 

ファゴットが活躍します。

 

🔷交響曲第92番「オクスフォード」  ベーム/ウィーン・フィル

 

 

「オクスフォード」の名の由来は、ハイドンがオクスフォード大学から名誉博士号を授与され、その授与式でこの交響曲を演奏したということになっています。しかし、実際はハイドンの到着が遅れリハーサルが出来なかったので、そこのオーケストラが馴染んでいる別の交響曲を演奏するしかなかったそうです。

 

暗い雰囲気を持つ序奏から入るアレグロはすごく真面目な感じで、大きさを感じます。「ドーニ交響曲」を締めくくるに相応しい交響曲です。

 

「ドーニ交響曲」はその精神において、ベートーヴェンにつながるものを感じさせます。しかしハイドンは、続く「ハイドン・セット」でハイドンならでは音楽を完成させていきます。

 

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さて、前半戦はこれで終了です。

 

近いうちに後半戦として「ハイドン・セット」の12曲を聴いていこうと思います。