この”私の視聴室”で度々取り上げている”バッハの素晴らしさ”を今回も取り上げます。

 

単にバッハの名作というだけでなく古今数多の名曲の中でも群を抜いて素晴らしい曲だと感じています。

 

今回はミッシェル・コルボが手兵ローザンヌ声楽・器楽アンサンブルを指揮したレコードで聴いてみようと思います。

 

 

この曲はリヒターとミュンヘン・バッハ管弦楽団の名盤が有名ですが、コルボは全く違ったアプローチでこの名曲に迫ります。

 

🔷バッハ「ロ短調ミサ」

 

この曲は大きく、

 

1「キリエ」

2「グロリア」

3「クレド(ニカイア信条)」

4「サンクトゥス」

5「アニュス・ディ」

 

に分かれ、全体は27曲で構成されています。

 

この曲は実は色々な機会に書かれた音楽を一つのミサ曲としてまとめたものということが信じられないくらい、全曲の繋がりが自然です。

 

🔷コルボの「ロ短調ミサ」

 

リヒターと全く違うアプローチと書きましたが、その事は第一曲「キリエ」の合唱の第一声を聴けば明らかです。リヒターは厳しく激しく合唱を歌わせます。しかしコルボは違います。そっと静かに歌わせます。

 

リヒターの厳しい態度はこのミサ曲全体を貫き、荘厳なゴチック建築を見上げるが如く聴く者を圧倒し、至福へと導きます。

 

コルボの目線は常に優しく、人々と同じ地平に立って演奏していきます。この両極端な演奏のどちらを聴いても感銘を受けるのは、曲自体の素晴らしさを物語ります。

 

またコルボ盤で注目すべきは、トランペットで名手モーリス・アンドレを招いていることです。ジャケットでアンドレの名前を見ていなくても「グロリア」でトランペットが登場した途端、”これはアンドレだ!”と気づきます。

 

ピアニストにしろ、ヴァイオリニストにしろ、中々その音だけ聴いて名前が浮かぶ人は滅多にいませんが(すみません、私の場合です)、アンドレのトランペットはどんな曲でも誰の指揮でも気が付きます。彼のトランペットが鳴るだけで空気が一変し、演奏に輝きが増します。

 

リヒターのミュンヘン・バッハ管弦楽団は映像で見るとそれなりの規模のオーケストラで、音にも厚みを感じますが、コルボのローザンヌはかなり少人数の団体のようで透明な響きが魅力です。そしてそれがコルボの解釈とマッチしていると感じさせます。

 

「ロ短調ミサ」の聴きどころはあえて書きません。もちろん壮大なフーガや盛り上がりの大きな曲の方が聴いていて満足度は高いですが、やはりこの曲は全曲を通して聴いて頂きたいから。

 

「マタイ」よりも短く、レコードなら2枚で済みます。レコード2枚というとブルックナーやマーラーの交響曲一曲分です。