今回の”私の試聴室”は、前回聴いたムラヴィンスキーのバルトークとシベリウスがあまりにも良かったので、その続きです。

 

今回はヒンデミットの交響曲「世界の調和」。

 

 

このレコードも来日に合わせて廉価シリーズものとして発売された中の一枚。当時シリーズから何枚か買った中の一枚だったと思います。

 

しかし、聴いた記憶がありません。

 

聴く前に曲のことを調べてみましたが、頼りのウィキペディアも作成中ということで何の情報もありませんでした。

 

レコードのジャケット裏に解説はあるのですが、ジャケットに掛けられたタスキをずらすと破れそうで読めません。

 

何とか、ヒンデミットがヴァイオリニストから作曲に進んだこと。ナチスから非難されていたヒンデミットをフルトヴェングラーが熱心に擁護していたこと、またヒンデミットの「画家マティス」はフルトヴェングラーが初演したこと。そして「世界の調和」は元々はオペラでそこから交響曲に編曲したもの、ということが分かりました。

 

🔷ヒンデミット 交響曲「世界の調和」

 

これほどしっかりした曲だとは思いませんでした。

 

誰かの亜流というものではなく、ヒンデミットの個性的な音楽としか言いようがありません。無理やりこじつければショスタコーヴィチのような響きが聴き取れる気がしないでもありません。もちろん曲の内容ではなく響きという意味ですが。

 

フルトヴェングラーが初演した曲があるくらいなので現代の作曲家といってもいいかと思いますが、思いの外分かりやすく、これはヒンデミットが新古典主義への嗜好を示してからのものだからだと思います。

 

曲は3つの楽章で構成されていています。

 

打楽器の衝撃音を合図に第一楽章は現代音楽っぽく始まりますが、そこは新古典派の音楽だけあって分かりやすく進行していきます。全体にリズミカルで攻撃的な音楽です。

 

第二楽章は悲劇的な響きがするアダージョ。レニングラード・フィルの金管軍の輝かしい響きに耳が奪われます。

 

第三楽章は前半はく荘厳な雰囲気を持ち、木管が煌めくように鳴らされるところからフィナーレに入るのだと思います。フィナーレは勢いそのままで壮大な感動を持って迎えます。最後はショスタコーヴィチ張りにティンパニの連打を伴って終わります。

 

こんな素晴らし曲が目の届かない所にあったのかと、喜ばしい限りです。

 

ブルックナーやマーラーはちょっと飽きたかな?と思われる方に是非聴いてもらいたい曲です。

 

曲の素晴らしさに圧倒されて、ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルにはあまり触れられませんでしたが、このコンビなら当然というべき素晴らしい演奏でした。