今回の”私の試聴室”は、指揮者ムラヴィンスキーを取り上げます。
そう思ってムラヴィンスキーのレコードを探してみたら、モーツァルトからショスタコーヴィチまで色々ありました。
今回はその中から、バルトークとシベリウスの入ったものを聴いていこうと思います。
このレコードはムラヴィンスキーの来日に合わせ、廉価シリーズで出た一枚で、私の持っているムラヴィンスキーの殆どがこのシリーズのものです。
オーケストラは手兵レニングラード・フィル。
🔷バルトーク「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」
音楽が始まった途端、その冷んやりとした響きに驚きます。この曲ではライナー/シカゴ交響楽団のCDを愛聴していますが、全く雰囲気が違います。
間違えようものなら粛清されそうなイメージがあるムラヴィンスキーなのですが、レニングラード・フィルのメンバーは萎縮することなく思い切りの良い演奏を聴かせます。これがライブ録音とは思えないアンサンブルは見事としか言いようがありません。
この曲は確かバルトークが楽器配置を指定していたと思いますが、ファーストとセカンドのヴァイオリンを左右に分けた効果がよく出ています。
第三楽章アダージョで何か巨大なものが迫ってくるような恐ろしさは、ムラヴィンスキーで初めて経験しました。
終曲は疾走する音楽とは裏腹に何一つ表情を変えずに冷静にタクトを振るムラヴィンスキーが見えるようです。カラヤンのようにその指揮ぶりから団員にインスピレーションを与えるやり方とは全く違い、どんなに音楽が盛り上がってもどこか冷たさが残るのはそのためかも知れません。
しかし、それがムラヴィンスキーの魅力なのです。
見事な演奏でした。
🔷シベリウス「交響曲第7番」
このレコードには1965年2月という録音データしかありませんので、バルトークとは違う日かも知れませんが、ライブ録音です。
シベリウスの「交響曲第7番」はあまり馴染みが無いので他の指揮者との比較はできませんが、ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルはとても美しく壮大です。
シベリウスの交響曲では「第4番」を筆頭に「第5番」をよく聴きますが、この曲も素晴らしいですね。
北欧の香りが全くせず、先ほどのバルトークのような音楽になってしまっていますが、それが欠点になるどころかプラスに働いています。この甘さを徹底的に排除するやり方こそムラヴィンスキーをムラヴィンスキー足らしめています。
ムラヴィンスキー恐るべし!です。
他のレコードも聴いてみたくなりました。