さて、今回の”私の視聴室”は、音楽をテーマにした映画視聴記です。
・「蜜蜂と遠雷」
・「リトル・マエストラ」
の二本立てです。
🔷「蜜蜂と遠雷」
恩田陸さん原作の映画化。小説は読んでません。
「のだめカンタービラ」を連想させるコンクールを舞台した映画で、日本の地方のピアノ・コンクールながらその優勝者が世界のトッププレイヤーの仲間入りをしたことで、ぐんとステータスが上がり、優秀な若手ピアテシストがこぞって参加するようになっています。
主演には最近ドラマで注目を浴びた松岡茉優さんが、子供ながら世界デビューを果たしながらもコンサートを途中で放棄してしまう事件で姿を消したピアニストを演じています。
映画では若いピアニストたちのコンサートでの苦悩や希望を描いているので、音楽がふんだんに流れます。
その上、取り上げられる音楽が「のだめ」の分かりやすいベートーヴェンやラフマニノフなどと違って、プロコフィエフ、バルトークといった現代風の音楽なので一般ウケはしないかも知れません。
こういった類の映画やドラマで問題になるのは、音楽の素人である俳優がいかにそれなりの格好をつけられるかですが、ピアノという楽器は実際の手の動きはプロの別撮りで済むため、弦楽器に比べるとかなりハードルは低い分、この映画でも全く気になりません。
ただ「のだめ」を演じた上野樹里さんは腕や手を含めた上半身を写されても全く違和感が無いくらい練習したんだろうなと思わせましたが、松岡さんはそこまでは出来ていないのがちょっと残念。
映画自体の面白さは星3つというとこですが、この映画でプロコフィエフの「ピアノ協奏曲」を聴いてみったのは良かった。
🔷「リトル・マエストラ」
この映画は前に観たことがあって、正直あまり面白く感じていませんでした。
今回改めて観てみようと思ったのは、主演が有村架純さんだと分かったらから。有村さんは「前科者」があまりに素晴らしく大好きな俳優さんの一人になりました。
これは「蜜蜂と遠雷」とは全く違ったスタイルで、演奏シーンを実際に近づけようとすることはなく、それなりの雰囲気で通します。
演奏される曲も「威風堂々」一曲だけです。
最初に観た時にがっかりしたのはそういった音楽的には素人っぽさでした。
話は日本海に面した小さな漁村のアマチュア・オーケストラにある事から幻の天才指揮者という触れ込みで一人の女子高校生を呼ぶことになった所から始まります。
冒頭で「ビリ・ギャル」風のギャル姿で有村架純さん演ずる吉川美咲が登場しますが、団員の前に立った時は、真面目な女子高校生姿に変身していて驚かされます。
蟹江敬三、前田吟といった重厚な役者たちが映画を支えます。最後には小倉久寛まで登場します。
有村架純さんもここではまだ「前科者」のような演技ができるとは想像もできませんが、エルガーの「威風堂々」が最初から最後まで支えた映画だったと言えそうです。