リヒャルト・シュトラウスが最晩年に書いた「4つの最後の歌」という歌曲があります。

 

1 「春」

2 「9月」

3 「眠りにつく時」

4 「夕映の中で」

 

1〜3はヘルマン・ヘッセの、4はアイフェンドルフの詩に曲付けしたもので、リヒャルト・シュトラウスが亡くなる1948年に書かれています。

 

選ばれたヘッセやアイフェンドルフの詩自体は死を意識した内容になっていて、老作曲家の心境にぴったりしたのだと思います。

 

”幸せな作曲家”と書いたのは、死を意識した最晩年であっても、その音楽は悲惨さは微塵もなく、ただただ透明だから。

 

同時代の作曲家で親交のあったマーラーが、最後の交響曲「最9番」で死に抗ったのとは大きく違います。

 

もちろんリヒャルト・シュトラウスは80過ぎまで生きていたのに対し、マーラーは50代で亡くなったことも関係するのでしょうが。

 

「夕映の中で」の最後の歌詞は、

 

”おお、遙かな、静かな平和よ!
こんなにも深く夕映に包まれて
私たちはさすらいに疲れた
これが死というものなのだろうか?

 

そして音楽の美しいこと!

 

あれだけ多弁だったリヒャルト・シュトラウスが人生の最後に書いた簡素ながら多彩さを忘れない名曲です。

 

カラヤン/ベルリン・フィルの元、ヤノヴィッツが歌った演奏から、「夕映の中で」を是非聴いてみて下さい。

 

カラヤンにはアンネ・トモワ=シントウとの新録もありますが、ヤノヴィッツの声に軍配をあげたいと思います。