フランクの「ヴァイオリン・ソナタ」といえばこの一枚というレコードがあります。

 

オイストラフとリヒテルのレコード。

 

このレコードで初めてこの曲を知って、その演奏の印象がそのまま曲のイメージになってしまった感じです。

 

私にとっては”絶体的な演奏”という訳ですが、今日は何種類かの演奏を聴き比べ、改めてオイストラフとリヒテルの演奏の何が素晴らしいのかを考えてみたいと思います。

 

🔸ヤッシャ・ハイフェッツ/スミス

 

 ハイフェッツの「ラスト・リサタル」

 

 

 

 10年間リサイタルから遠ざかって教職についていたハイフェッツが学生支援のための開

 いたチャリティコンサートのライブ録音。

 

 実はこのCD中国の闇店で買ったもの。違法CDなんでしょうが、やけに豪華なパッケージ

 に入ってます。

 

 何を弾いてもハイフェッツになってしまうのがハイフェッツたる所以ですが、この演奏は

 ハイフェッツにしては平凡な感じを受けます。

 

🔸シュロモ・ミンツ/イエフイム・ブロフマン

 

 

 ブロフマンの圧倒的に存在感のあるピアノが終始リード。ミンツも美音を聴かせてくれま

 す。

 

🔸五嶋みどり/ロバート・マクドナルド

 

 

 今回の聴き比べで一番驚いたのがこの演奏。

 

 五嶋みどりさんて、こんな繊細な人だったんだ。隙さえあれば弱音の世界に入り込んでし

 まうようなヴァイオリン。勝手にテンペラメントの人と決めつけていたのを反省していま

 す。

 

 この人の演奏をもっと聴きたいと思います。

 

🔸イツァーク・パールマン/ヴラディーミル・アシュケナージ

 

 

 パールマンもアシュケナージもロマンティックな演奏を披露しますが、この曲の姿とは少

 し違っている感じ。

 

🔸オーギュスタン・デュメイ/マリア・ジョアオ・ピリス

 

 

 CDの手軽さもあって、フランクというとこの演奏をよく聴いています。

 

 大好きなグリュミオーの流れをくむデュメイの繊細なヴァイオリン、ピリスは意外でした

 がベートーヴェンが良くて好きになったピアニスト。色彩感豊かなピアノを聴かせます。

 

 録音も他に比べ一段素晴らしく、この曲のベストだと思います。

 

🔸オイストラフとリヒテルのレコード。

 

 

 デュメイとピリスをベストと言ったばかりですが、やはりこのペアの演奏は別格です。

 

 冒頭リヒテルのピアノから明らか今まで聴いてきたピアニストたちとは異次元の響きで

 一気に独自の世界を築いてしまいます。

 

 この演奏がライブ録音であることも影響しているのかも知れません。

 

 オイストラフのヴァイオリンはリヒテルに比べるとそこまで個性的ではありませんが、そ

 の骨太な響きでリヒテルに呼応していきます。

 

 この演奏はもしかしたらフランクの「ヴァイオリン・ソナタ」としては本流ではないのか

 も知れません。明らかにリヒテルの「ピアノ・ソナタ」になってしまっていますから。

 

 だからと言ってオイストラフがダメかというと全くそんなことは無くて、このリヒテルに

 対抗できるのはオイストラフしかいないと思わせる存在感を示します。

 

 色々聴いてきましたが、やっぱり私にはオイストラフとリヒテルの演奏の印象が刷り込ま

 れてしまっているなあと改めて感じました。

 

 私には”絶体的な演奏”です。