前回のラトルの指揮で「英雄」が良かったので、他の演奏会を色々検索してみたらラトル最後の定期演奏会でマーラーの「第6番」があったので観てみました。
2018年6月20日のコンサートです。
マーラー 交響曲第6番「悲劇的」
指揮:サイモン・ラトル
この曲はラトルが初めてベルリン・フィルを指揮した時の演目だったということです。
🎻(視聴開始)
最初から何か暖かさを感じさせる演奏。
(カラヤンとのライブ演奏がいくつか動画で聴けますが、大体冒頭のトランペットがミス
ってますのでちょっと心配しましたが、問題なく過ぎホッとしました)
もちろん生ぬるいとか凡庸とかとは全く違うメリハリのある演奏には違いないのですが、
それが何か分からないまま聴き進めていくうちに、ラトルの妙な棒の振り方が実は楽器の
旋律を示唆していること気がつきました。
ラトルのマーラーの根本は「歌」にあります。
私もマーラーの根本はその「歌曲」にあって、その最高の結実が「大地の歌」だと常々感
じ始めたところで、だからそれ以外の交響曲への興味が薄れかかっていましたが、こんな
演奏を聴いてしまうと、「マーラーの交響曲もやっぱり悪くないな」と思わされます。
とても感心しました。
ところで、最近誰かの演奏でも聴きましたが、ラトルも第一楽章のあとアンダンテの楽章
が来ます。ショルティやカラヤン、バーンスタインといった大御所たちは第二楽章がスケ
ルツォ楽章だったので、調べてみるとマーラーのスコアでは第一楽章の後はスケルツォー
アンダンテの順だったのを、初演の練習中に急遽楽章の入れ替えを行なっていました。
ただ出版時には元の楽譜のままスケルツォーアンダンテで行われいるという経緯があるた
め、こういったことが起きるんですね。
この演奏会が良かったので、ラトル就任後の最初の演奏会があったのでそちらも観てみました。
2002年9月7日でその時もマーラーでした。
マーラー 交響曲第5番
指揮:サイモン・ラトル
🎻(視聴開始)
最後のマーラーと比べるととても興味深い演奏だった。
ここでのラトルのマーラは”劇的”。ベルリン・フィルという世界最高のオーケストラの首
席になったラトルの血気盛んな意気込みを感じさせる力演。
若さ溢れる激しいマーラー。ベルリン市民の期待も高まったことでしょう。
第三楽章が始まる前に珍しいことが起きました。ホルンのトップが席を離れ指揮者の横に
立ったのです。その動きから見ても予め打ち合わせがあったものですが、プレイヤーへの
最高の賛辞ですよね。
それに応えてオーケストラも一段と熱が入ります。このパフォーマンスは聴衆の心も掴ん
だはず。ラトル上手いなあ。
こうやって聴くと第三楽章ってホルン協奏曲なんですね。
この曲最大の聴きどころといってもいいアダージェット。ラトルは目一杯歌わせますが、
それが嫌味にならないところが英国紳士たる所以でしょうか。
こうなると最終楽章の白熱は約束されたようなもの。期待通りの大迫力でした。
さて、若きラトルのマーラーと16年後の円熟のマーラー。私は従来のマーラーの延長線上にある「第5番」より、新鮮な「第6番」の方が好きですが、どちらもラトルの力量をうかがい知るには十分過ぎる演奏会でした。