今回はペトレンコの前任だったラトルの指揮で「英雄」を観てみました。
2016年5月1日のコンサートですが、海外公演で会場はノルウェーのどこかの教会のようです。
ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
指揮:サイモン・ラトル
「英雄」は色々聴いているので、つまらなかったら途中で止めてもいいかな、と思いながら視聴を始めました。
🎻(視聴開始)
ラトルのテンポは速め。最初の2つのコードはタクトを上下するだけ。そして色々細かな
旋律が聴こえるようなオーケストラの鳴らし方。
しかし分析的とは180度違う感じ。あのトランペットがテーマを高らかに鳴らすとこ
ろ。2回目は変調していて当時の楽器では吹けなかったため、ベートーヴェンは木管で代
用していますが、ほとんどの指揮者は現代楽器なら出来るからと楽譜とは違ってトランペ
ットに吹かせます。しかしラトルはベートーヴェンの楽譜通り木管で吹かせています。
「つまらない演奏だったら途中で止める」とは反対にどんどん引き込まれてしまいした。
最終楽章でベートーヴェンは素晴らしい弦楽部の扱いを見せていますが、ラトルはヴァイ
オリンを左右に分けて配置し、それらを強調した指揮ぶりで「我が意を得たり」という感
じでした。
どんどん演奏に引き込まれながら、「何が違うんだろう?」と頭の片隅ではずっと考えて
いましが、ようやく分かりました。
ラトルは今まで「英雄」にこびりついてきた垢を一旦全部忘れ、楽譜から聞こえるままの
演奏をしようとしています。
それで思い出しました。確かラトルがベルリン・フィルの首席に就任してベートーヴェン
の何かの交響曲を演奏した時、ベルリン・フィルを長年聴いてきた一人の老婦人が「ニュ
ー・ベートーヴェン!」と言ったという記事を読んだことがありました。
ラトルの意気に感じ入った演奏でした。