「今日は1991年公開の『天河伝説殺人事件』です。」

「結構古い映画ですね。」

「『犬神家の一族』など横溝正史さんの推理小説の映画化で一躍ブームになった角川

   文庫の角川映画です。」

「それ、テレビで観た記憶があります。ちょっと根暗な感じの雰囲気がある映画でし

   たよ。」

「この映画も角川映画で二匹目のドジョウを狙った意欲作ですね。テレビドラマでも

   知られた浅見光彦が登場する内田康夫さんの推理小説が原作です。」

「二匹目目のドジョウ?」

「横溝正史シリーズの角川映画は一躍脚光を浴びましたからね。監督が市川崑、俳優

   陣に石坂浩二や加藤武の名前がありますが、これは最初の金田一耕助シリーズを観た

   人にはこれだけで映画の雰囲気がわかるというものです。」

「どんな雰囲気なんですか?」

「一言でいえば”おどろおどろしい”ですかね。大瀧秀治さん、岸部一徳さん、岸田今

   日子さんなんてその雰囲気の常連ですし、トドメは岸恵子さんですよ。」

   「さあ、観てみましょう。」

 

🎥(視聴中)

 

「雰囲気は確かにありましたが、それほど”おどろおどろしい”感じはありませんでし

   たね。」

「原作の横溝正史さんと内田康夫さんの作風の違いでしょう。私のように金田一耕助

   シリーズにハマった者には最初に石坂浩二さんのナレーションが流れただけでもうそ

   の雰囲気に入ってしまいます。石坂浩二さんは映画の最後でちょこっと主人公の兄役

   で出てましたね。」

「映画の筋はよく分かりましたが、映画の途中というかかなり前から犯人や動機がが

   予想できてしまった感じです。」

「ほー、そーですか。どんな風に?」

「だって、話に絡む人物が限られていますし、キーになるような人物関係も早くから

   映画の中で明らかにされちゃいますから。」

「そうなんですね。推理映画らしいあっと驚くようなトリックもアリバイ作りもあり

   ませんしね。」

「じゃあ、つまらない映画なんじゃないんですか?」

「うーん、その辺は評価が分かれるところでしょう。私は俳優陣の重厚な演技に見惚

   れてしまいました。言ってみれば筋書きが分かっている”演劇”のような映画じゃない

   いでしょうかね。今時の若い俳優さんたちにも素晴らしい個性を持った人も多いです

   が、この映画に出てくるような味はなかなか出せません。」

「重厚さはよく分かりませんが、元々小説なんだから筋書きが分かっていると言うの

   は当たり前ですね。そういう映画にあっと驚くようなトリックを期待するのは確かに

   筋近いですね。」

   「それでは先生の評価をお願いします。まあ、だいたい予想はできますが・・・」

「『角川映画の同窓会のような映画。役者さんたちの味のなる演技を楽しみましょ

   う』です。」

「やっぱり。それでは次の映画を楽しみにしてますね。」